三宝港

青ヶ島へ渡る交通機関はヘリコプターと渡船がある。
この両者を比べると決定的な違いは就航率で、ヘリコプターが約8割なのに対して、渡船は4割を切る。 島民の常識は、多少の風でもヘリコプターは飛ぶ。風が吹くと海が荒れて船は欠航になる。ヘリコプターが弱いのは濃霧の時だけである。
運賃は3倍以上するが人の移動はより確実なヘリコプターが主になりつつあり、急ぎの荷物も割高な運送料を払ったり、超過料金を払ってでも ヘリコプターに乗る人に託けて運んでもらう。

とはいえ、船も青ヶ島にとってはなくてはならない交通機関である。ヘリコプターでは運べないような大きな荷物を運んだり、また、産業廃棄物の 回収船が就航して島の環境を守っている。
八丈島から船(還住丸)で青ヶ島に渡った場合、着くのはここ三宝港である。 三宝港は青ヶ島唯一の船が着岸できる港として機能して、島の玄関口となっている。

三宝とは仏教で言うところの三宝(仏、経典、僧侶)に由来するそうだが、実際には断崖の下にちょうど足がかりとなるのに便宜な3つの岩があり、港としての体裁を整えていったので、三宝と呼ばれていた岩の名前にちなんで名付けられたそうである。

今では岩場はコンクリートに固められて岸壁の一部に取り込まれている。そればかりでなく新しい岸壁も作られて、港としての機能が高められている。

青ヶ島三宝港

青ヶ島に滞在した3日間、結局還住丸は就航しなかった。

三宝港の様子は、旧岸壁と新岸壁の両方が村内のケーブルテレビで24時間流されている。


三宝港の背後の断崖は、コンクリートで固められてまるで要塞のようになっている。
青ヶ島は火山性の土壌のために、もろく、常に崩落を繰り返している。ここまで大掛かりな工事をしないと、がけ崩れの危険性があり、港湾の機能を維持できないのである。

写真下は三宝港からさらに南側の断崖を眺めた。溶岩が崩落した黒い筋が海に向かっていくつも落ちていっているのが見える。
こうした場所をコンクリートで固めながら、なんとか港湾機能を維持しているのが青ヶ島の実情である。



三宝港の背後に青宝トンネルが坑口を開けている。 外輪山をぶち抜いて、港と池の沢地区を結ぶ全長505mのトンネルだ。 1985年(昭和60年)にこのトンネルができると、私が歩いてきた集落から左回りの外輪山の外側をめぐる道を通らずに、 逆回りのルートで流し坂から外輪山の内側の池の沢を経て三宝港に至ることができるようになった。 外輪山の内側を通ることで強風や落石の危険を避けることができるようになり、さらに流し坂にもトンネルができて道路が 良くなったので、今では池の沢・青宝トンネル経由のルートの方がよく使われている。

今回は外輪山の外側を回って三宝港に着いたので、青宝トンネルを抜けて外輪山の内側の池の沢地区へ向かうことにする。


目次へ戻る


(C) TTS 2005 All rights reserved