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レインボーブリッジ

一時は東京のトレンディースポットとして注目を集めたお台場とそこへ通じるレインボーブリッジも、今ではすっかり東京の都市景観に溶け込んでいるようである。今回の道路探検は、そんな華やかな雰囲気のお台場を「12号埋め立て地」、レインボーブリッジを「首都高速11号線・東京港連絡橋(臨港道路)」と素っ気なくも小難しく呼んで、道路と橋をいろいろ論じてみようと思う。
しかも道路探検は現場主義。ということでレインボーブリッジ併設の遊覧用歩道をてくてく歩いて取材しすることになった。
取材:1999年8月

お台場海浜公園からレインボーブリッジを眺める。首都高速と臨港道路の2本の道路が上下に弧を描いて、吊り橋へと吸い込まれていく。東京の芝浦とお台場(12号埋立地)とを結ぶレインボーブリッジの正式名称は「首都高速11号線・東京港連絡橋(臨港道路)」と言い、それぞれ管理者のことなる道路が2層になった橋である。
首都高速にとってみれば路線の一部がたまたま橋になっているだけという扱いであるが、臨港道路の管理者である東京都港湾局にとってみれば12号埋め立て地と本土とを結ぶ連絡橋であるということが全てである。そうした思惑の違う両者が同じ橋を共用しているのである。

手前の石垣は、幕末に東京湾に築かれた砲台のひとつ、第6台場。東京湾に現存するものでは一番規模が大きく国の史跡に指定されている。埋め立て地の通称「お台場」はここから来ている。レインボーブリッジの歩道からは、もうひとつ東京湾に残されている第3台場を見下ろすことが出来る。


歩道の台場側の入り口。ここで歩道の遊覧料300円を払う。

これから歩き通す歩道の長さは約1.7kmある。そのうちレインボーブリッジに沿って1523mある。橋脚のことをピアと言いそれに通し番号を振って位置を示すが、歩道はピア22(芝浦側)からピア33(お台場側)まである。
このうちピア22が芝浦側のアンカレッジ(ケーブルを留めておく土台)に、ピア25と26がお台場側のアンカレッジに当たり、この間がレインボーブリッジの吊り橋部分になる。芝浦側はアンカレッジにエレベータを取り付けて歩道の入り口としているのですぐに吊り橋となるが、お台場側から歩き始めた場合はピア33からピア26の間は吊り橋への取り付け部を歩くことになる。吊り橋の中央まで芝浦側から409m、お台場側から1,114mである。

まずは吊り橋への取り付け部を行く。橋桁の下の薄暗いところに歩道がめぐらされていて、まるで保守点検用の通路のような感じがする。
こういう構図は好きである。
レインボーブリッジは、上層が首都高速11号台場線、下層が東京都港湾局管理の臨港道路という2重構造になっている。
歩道は臨港道路に沿って設けられている。この臨港道路は港湾連絡の産業用道路であることから車が無料で通行できるのに、歩道の部分は「観光用の施設」扱いで入場料を取られる。こちらは汗水たらして歩くのにその上お金まで取られるのは納得いかない気もするが、道路探検活動のためなら仕方がない。
上層の首都高は、台場入り口からの合流路を迎え入れるような形になっていて隙間が開いている。
覆い被さった。
臨港道路の右側(橋の中央部分)に見える柵は、新交通システム「ゆりかもめ」の通路とを仕切っている柵である。

ようやくお台場側のアンカレッジ(ピア25-26)にたどり着いた。ここからが吊り橋部である。
アンカレッジはいわばコンクリートの塊で、ケーブルを引っ張る重しの役割をしている。力学的に吊り橋の中で最も重要な部分である。主塔から太いケーブルがアンカレッジに通じているのが見える。
このアンカレッジが歩道全体のちょうど中間地点にあたり、展望台や展示室が設けられている。

よくある構図その1

お台場側から来たので、この先の吊り橋の部分を北ルートで渡るか、南ルートで渡るか選択しなければならない。
普通は東京タワーなどが見える北ルートが好まれる(お勧めする)ようだが、今回は南ルートを選ぶ。足下に第3お台場や、遠くに首都高の東京港トンネルの排煙塔などが見える。

ケーブルに吊り上げられて橋桁が太鼓状になっている様子がよくわかる。吊り橋の中央部で海面からの高さが一番高くなり、レインボーブリッジの場合は路面上で60mある(現地に掲出の看板の数字)。
ただし、吊り橋はもともとたわみやすくできていて橋を通る車や新交通システムの車両の重量によって沈下するし、夏の高温時には鋼材で出来ているケーブルや桁が伸びるため、この数字が絶対ではない。最悪の条件として、夏に鋼材の温度が50℃まで上昇して膨張し、各道路に自動車や人がひしめき、かつ新交通システムの電車が2本橋の中央にさしかかったという橋桁が一番沈み込む状態(最大で2.7m下方にたわむ)を想定し、なおかつ潮が満ちた場合でも桁下の有効高(航路限界高)は52.4mを確保してある。これは大型帆船日本丸を基準にしているそうである。
なお暴風雨で横殴りの風を受けたとき、水平方向に最大で3.3mたわむ設計になっている。

レインボーブリッジの名前にちなんで、柱が虹色にペイントしてある。

芝浦側。臨港道路は高低差を克服するためにループになっているので、その注意標識が出ている。270度回転したループ・マニアにとっては見慣れた標識である。
歩道はこのループの手前の芝浦アンカレッジで終わってしまうので、ループを見届けることは出来ないのが残念だ。

よくある構図その2

芝浦側の主塔(ピア23)からお台場側を望む。

新交通システム「ゆりかもめ」の芝浦ふ頭駅付近。この付近は東京港の港湾地区に含まれていて、レインボーブリッジは東京港内の芝浦埠頭と12号埋め立て地とを結んでいる純然たる港内の連絡橋である。ところが当の港湾局(当時の運輸省主管)が都市開発(同建設省主管)を手がけたのがお台場開発で、そのためにいろいろややこしいことが生じている。

レインボーブリッジの下層の道路は都の港湾局管理の臨港道路、つまり産業用道路という位置付けのために歩行者や自転車の通行は配慮されていない。ところが都市開発によってお台場に居住地区を作ってしまったので、生活道路として自転車や歩行者の無料通行が求められるようになってしまった。
今回歩いてみた遊覧歩道の無料開放が検討されているところである。

道路脇を走るゆりかもめも、管轄の違いによって、軌道法にもとづく区間(新橋〜日の出、お台場海浜公園〜テレコムセンター、国際展示場正門〜有明)と鉄道事業法(日の出〜お台場海浜公園、テレコムセンター〜国際展示場正門)にもとづく区間に細かく分かれている。基本的には道路に併設する軌道扱いだが、港湾地区は鉄道事業法(港湾法も鉄道事業法も当時の運輸省の管轄)を根拠法にしている。臨港道路に並行しているレインボーブリッジ部は、れっきとした単独の鉄道線なのだ。だが実際の話はもっとややこしくて、12号埋立地は港湾法にもとづく事業区域であるが一部に一般道路として建設された道路区間があり、その区間に並行する部分は軌道法に依っている。


【注意】このページで使っている数字や事実関係は、現地に掲出してある看板を元にしています。他の資料では、例えばピアの数え方など異なる場合があるようです。
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