九州旅行2006

今回の旅行は家内同伴である。

ひとり旅だと自由勝手に予定を立てられるが、 同行者がいるとそれぞれの思惑が絡み合って、なかなか計画がまとまらない。 しかも、地理を知らない妻と、地理がなまじっかわかっているが故にいろんな所に 立ち寄りたい夫が、「ついでにここ寄れるかな?」「ついでにここ寄りたいな」と好き勝手に 持ち寄るのだから、ついでがついででなくなってしまう。

事の顛末を一つ一つ書いていてはキリがないが、顛と末を書くと、 スターフライヤーが期間限定で格安運賃を出しているのでそれを利用して、 挙句の果てに九州を一周してしまうプランになってしまった。

九州内の移動手段はレンタカーを借りることにした。 九州に出入りする北九州空港から最遠目的地の鹿児島まで約400Kmはある。 本州の感覚だと東京から名古屋の先まで行ってしまう距離だ。


第1日目:スターフライヤーで北九州へ

出発日の朝は早い。朝7時40分発の始発便を予約したからだ。
これに乗れば北九州空港には9時40分に着く。 今日はその後、鹿児島まで一気に行ってしまう予定である。 朝早ければ早いほど現地のドライブには余裕が持てるが、逆に寝不足がつらい。

スターフライヤーは今年(2006年)3月の北九州空港移転と同時に運航を開始した、新規 参入の航空会社で、特徴のあるサービスを売りにしている。真っ黒な機体の塗装からして 他にはないが、機内の設備もシートが全席革張り、液晶モニター付きで、なによりもシートピッチが 広いのが嬉しい。

半年前にできたばかりの飛行機会社で、初めての利用なので、ちょっとわくわくする。 バスでの搭乗なので、機体の写真を撮ったりしてから乗り込む。
それにしても天候が悪い。機体もずっと揺れている。
離陸して小一時間たって、液晶画面に表示される現在地情報ではそろそろ名古屋の上空に 差し掛かろうというのに、シートベルトのサインは点いたままだ。
大阪上空にやってくるころになって、ようやく揺れも収まり、窓の外の雲も切れ目ができてきた。
シートベルトサインが消えてあわただしく機内サービスが始まった。熱い飲み物は出さないことに なったらしく、独自サービスのひとつとして宣伝しているカフェのチェーン店と提携したコーヒーは飲めなかった。 かわりにお水を頼むと、ペットボトルの日田天領水を出してくれたのは、九州のご当地色が出ていて好印象だった。

ようやく天候も回復し、窓の外に広島、宮島、宇部と続けて街が見えるようになったかと思うと すとんと北九州空港に着陸した。

スターフライヤー
バスでの搭乗は面倒だが、機体をすぐそばで見ることができる(羽田空港)。登録番号はJA02MC

太田川の三角州に広がる、広島市
太田川の三角州に広がる、広島市


厳島神社の聖域として保護されている宮島。神社のある方は反対側

チブサン・オブサン

北九州空港は半年前に開港したばかりで、建物は新しいが、敷地内はまだ整備が続いているようだった。 レンタカーも砂利敷きの空き地に停めてあった。 新しい北九州空港は関門海峡を浚渫した土砂で海を埋め立てて作った海上空港で、連絡橋を通ってようやく九州本土に 上陸する。

まず北九州市小倉東区の河内貯水池に立ち寄って、南河内橋の写真を撮影する。ここは以前来たことがあるが その時は雨の日の夕暮れ時でいい写真が撮れなかったので、今回は写真を撮るだけが目的だ。

[日本のレンズトラス橋:南河内橋]

ここから次の目的地の熊本県山鹿市までは、車で約3時間の行程になる。 R200→冷水有料道路→R3→鳥栖IC〜菊水ICという経路で山鹿市に到着したのは午後2時に15分前だった。
お昼ご飯もろくに食べず、この間の行程を急いだかいがあって、山鹿市立博物館で午後2時から行われるチブサン古墳の内部公開に 間に合った。

チブサン古墳

2時になり、博物館の人の先導で、博物館からは車で3分ほど離れたチブサン古墳に案内された。 まわりはビニールハウスの畑が広がっていて、その中の森の茂みの影に、ひょっこりと古墳があった。前方後円墳だ。
後円部の横腹にステンレス製の扉があり、これが羨道への入り口になる。羨道はコンクリートで固められている。 今日は快晴の天気だが、前日までは九州は大雨だったそうで、染み出た水がコンクリートの上に水溜りを作っている。

羨道を一度下がって、また階段を8段上ると前室で、ここは石の壁のまま残されている。 高さは150cmぐらいしかない。かがみこんで、3人入るのがやっとの広さだ。

前室と玄室とはガラスで隔てられていて、ガラス向こうの玄室に装飾された家型の石棺がある。湿気で曇りがちな ガラスを通してだが、鮮やかな幾何学模様は強い印象を与えてくれる。チブサン=乳房の由来となったといわれている、 二つの円模様は見る者の視線を釘付けにし、写真で見るよりずっと大きく見えた。
しばらく見とれ、思い出したように博物館の係の人に質問をし、またしばらく装飾を食い入るように見つめる。 こうした行為を10分ほど繰り返した後、狭い前室から後ずさりするように出た。
足が痛くなっていた。

オブサン古墳

オブサン古墳は、チブサン古墳から200mほど離れたところにある円墳で、チブサン古墳とはよく対になって紹介される。 というのも、チブサン=乳房という由来に対して、オブサン=お産という由来を持つからである。ともに出産にかかわる意味づけである。
オブサン古墳がなぜお産を連想させるかについては、その形に由来しているという説がある。オブサン古墳には羨門へ導くように 両側に突堤が出ている。
今度はここからイマジネーションを膨らまして、この両側の突堤を2本の脚に見立てると、その股に当たる 部分には門が開いている、という、なんとも艶かしい話ができあがる。

オブサン古墳のこの直接的な造形を目にして、一度理由を知ってしまうと、もう他の発想はできない。 むしろオブサンの卑猥さがあって、チブサンの連想が生じたのではないかとさえ思ってしまう。

西南戦争のときには、田原坂に近いこの地も激戦地となり、オブサン古墳の股座(またぐら)に身を隠して石扉を弾除けに 使ったという、罰アタリなこともしている。

チブサン古墳外観
チブサン古墳外観。全長45m(後円部径24m、前方部幅15.7m)の前方後円墳。 山鹿市立博物館に申し込むと内部を見学できる。開館日10:00と14:00の2回。大人1人200円。博物館の 入館料とは別なので注意

チブサン古墳石室への扉
ステンレスのドアの向こうに羨道があり、前室まで入ることができる

チブサン古墳の石室内部
チブサン古墳の石室内部。現在内部の撮影は禁止されている


オブサン古墳外観。直径約22m、高さ約4mの張り出し付き円墳

山鹿温泉さくら湯

オブサン・チブサン古墳を見て、山鹿市の中心部へ向かう。
山鹿温泉で一風呂浴びようという魂胆だが、地図でさくら湯と書いてあるところを目指すが見つからない。 そこにはショッピングセンターがあるだけで、温泉の雰囲気ではない。だが位置的にはどう考えてもショッピングセンターの ある位置だ。仕方がないので一旦車を駐車場に入れて探そうと思ったら、なんとショッピングセンターの一部に温泉が 入っているのだった。
駐車場代が1時間100円、お風呂代が大人1人150円、しかもさくら湯の番台で判子をもらうと駐車場代が1時間分 タダになる。こういう値段で生活できるって、うらやましいなと思う。

ふろ上がりに、ショッピングセンター内のちょっと寂れた食堂街で、5人も入るといっぱいになるようなうどん屋に 入ってみた。肉うどんがおいしかった。店を切り盛りしているおばちゃんの話だと、郊外に大きなショッピングセンターができて ここのショッピングセンターも経営が厳しいらしい。さらに市では再開発で、さくら湯を、松山の道後温泉のような「古風」な 建物にして観光の目玉にするという計画があるらしい。そうすると「お風呂代も上がると」と言ってた。
温泉とショッピングセンターをいっしょにしてしまうという発想は、いかにも温泉の町らしいし、その当時は斬新な発想だった ことだろう。これだけの総合複合施設はないだろう。広々とした温泉を安く利用できる。今のままがいいなと思う。


山鹿温泉さくら湯

さくら湯の脇に山鹿町道路元標が立っている。大正期に温泉が街の中心だったことを示す証拠だ

第1日目:鹿児島まで

今日はこの後、鹿児島まで行って泊まる予定でいる。宿も予約してある。 時刻は3時過ぎでまだ日も高いが、後は移動するだけだ。

早速植木ICから高速道路に乗る。途中、人吉で温泉に入って、加久藤峠を国道で抜け えびのからは再び高速道路で鹿児島に到着した。途中温泉に入っただけだったが、それでも 時刻は9時を回っていた。
家内が調べておいてくれた天文館の「豚とろ」というお店でとんこつラーメンを食べて、投宿。
今晩の宿、KKRは最上階に展望風呂があって、夜景を眺めながらくつろぐことができた。

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