インターステイト95(I95)とその派生道路群

アメリカのインターステイトハイウェイ網の路線番号は、単に路線ごとに固有番号を割り振っただけでなく、奇数は南北縦貫路線で偶数は東西横断路線というように数字自体に意味を持たせたコードになっている。通常は2桁(ないし1桁)の数字が用いられ、3桁の路線番号が使われるとき(基本の2桁の路線番号に百の位が付け加えられるとき)は、2桁の路線の派生道路という扱いになる。つまり桁数にも意味が持たせてあるのである。
さらに3桁の派生道路群は、新しく付け加えられた百の位が奇数か偶数かによってもまた別の意味づけがなされている。百の位が偶数の場合は、もとになる路線(下2桁で表わされる)のバイパスまたは環状線を意味している。つまり両端共にもとの路線とつながっている場合である。これに対して百の位が奇数の場合は、支線を意味していて、片方しかつながっていない。

なるほど。アメリカの路線番号はとことん合理的に出来ている。と、ここでひとつの疑問が浮かんでくる。百の位が偶数になるのは2,4,6,8の4回、奇数になるのは1,3,5,7,9の5回だけである。いくつもの都市を通過する長い路線もあるのに、これだけの数で全てのバイパス・環状線・支線を表現することが出来るのだろうか?
地図を眺めていて見つけたその答えは、3桁の派生道路地域別に分類されていて、アメリカ全土を見渡すと同じ番号を持った路線が複数存在すると言うことである。このことを、東海岸を南北に縦貫しているI-95で調べてみた。I-95はメーン州からフロリダ州まで、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、バルチモア・ワシントンDCとアメリカ東海岸の主要都市を網羅している主要幹線道路である。


バイパス・環状部(百の位が偶数)支線部(百の位が奇数)
地域I295I495I695I895I195I395I595I795I995
メーン州Portland市街地Main TurnpikeBangor支線
ボストン大都市圏
ロードアイランド・コネチカット
プロヴィデンス環状線(RI)ボストン環状線プロヴィデンス−ケープ・コッドニューロンドン(CT)−ウースター(MA)
ニューヨーク大都市圏ズログズ・ネック橋ロング・アイランドEXPWYズログズ・ネックEXPWY支線(ブロンクス)
フィラデルフィア大都市圏フィラデルフィア東部外郭トレントン−スプリング・レイク(NJ州横断)
バルチモア・DC大都市圏(同番のメリーランド州道295が両都市間を連絡)-バルチモア環状線ハーバー・トンネル・スルーウェイバルチモア空港線ダウンタウン支線-レイスターズタウン支線
ワシントンDC東部外郭ワシントンDCベルトウェイ(環状線)---ダウンタウン支線--
リッチモンドリッチモンド東部外郭ダウンタウン支線
フロリダ州ジャクソンヴィル環状線マイアミ支線マイアミ支線マイアミ支線
地域I295I495I695I895I195I395I595I795I995

環状部支線部

解説

メーン州

メーン州はアメリカ本土の東のはずれにあるため、インターステイト・ハイウェイもI95しかない。I95が州を西南から東北に斜めに貫いていて州内の交通軸となっている。そもそも大きな都市がないメーン州だが、南部にある一番大きな都市ポートランドと州都オーガスタの間で、I95が海沿いのBrunswick経由なのに対して、有料道路メーンターンパイクとしてのI495がAuburn/Lewistonという内陸部の都市を結んで、数少ない都市を網羅するようになっている。
ポートランドではI95が外郭をバイパスしているので、ダウンタウンを貫く路線としてI295が派生している。もっともこの区間のI95は有料道路メーンターンパイクになっていて、ターンパークの本線をそのまま直進するとI495の方に向かい、I95は分岐する支線という扱いである。
Bangorはメーン州中部唯一の都市(繰り返すがもともと都市自体が少ない)で、海岸沿いを走っているUS1もAlt US1をわざわざ迂回させているくらいである。I395はI95から分岐してアケーディア国立公園へ向かう路線だが、Alt US1に接続することが目的のようなごく短い路線である。

ボストン大都市圏

派生した路線番号の割り振りを見ているとマサチューセッツ、ロードアイランド、コネチカットの3州をひとつの地域としているようだが、ここではボストン大都市圏として扱うことにする。
ボストンではマサチューセッツ・ターンパイクのI90が東西に、I93が南北に、それぞれダウンタウンまで通じ、I95自体は内環状線を成している。その外側に南はケープコッドから北はニューハンプシャー州との州境近くまでを直径として、I495が外環状線となっている。ボストンを中心に弧を描いているが、マサチューセッツ州内の連絡道路を考えても良さそうである。
I295はロードアイランド州プロヴィデンスの西部外郭道路で、I195はプロヴィデンスからケープコッドを結ぶ支線になっている。
I395は、コネチカット州ニューロンドンとマサチューセッツ州ウースターとを結ぶ比較的長い支線である。

ニューヨーク大都市圏

ニューヨーク大都市圏にはひとつの路線で完結した環状線はなく、いろいろな路線が絡み合って環状道路を幾重にも形成している。路線番号は全て環状・迂回道を示す偶数だが、I495なんかはニューヨーク市とロングアイランドを結ぶ支線のような格好になっている。
I95の路線群の他に

  • I278(スタテン島からブルックリンを経てブロンクスに至る内環状)
  • I478
  • I678(ヴァン・ヴィックEXPWY、ブルックリンとブロンクスを結ぶ)
  • I287(北部のウエストチェスター郡からニュージャージー州を縦貫する外環状)
といった派生道路群が複雑な道路網を形成している。

フィラデルフィア大都市圏

フィラデルフィア大都市圏と定義してみたものの、ここのI295,I195ともにニュージャージー内の道路である。ペンシルヴァニア州内はI76の勢力下で、ペンシルヴァニア・ターンパイクでもありフィラデルフィアの外郭環状線を兼ねているI276、スクラントンまで通じるペンシルヴァニア支線のI476がフィラデルフィアの西半分の道路網を成している。I95はデラウェア川沿いにダウンタウンを貫いている。

バルチモア・ワシントンDC大都市圏

バルチモアとワシントンDCはしばしばまとめて扱われるが、ここでもひとつの都市圏と見なされている。そのため、ダウンタウンへ通じる支線が両都市ともI395になっている他は、ワシントンDCの環状線にはI495を、バルチモアの環状線にはI695を割り振るなどして棲み分けている。I295はインターステイトハイウェイの区間はワシントンDCベルトウェイ(環状線 I495)の内側の区間に限られているが、同番のメリーランド州道295がそのままバルチモアまで続いていて実質的に都市間連絡となっている。
バルチモア・ワシントンDC大都市圏の道路網は基本的にI95の派生道路群によって構成されていて、他にはI70の短絡線のI270がDCに通じている。I97がバルチモアとアナポリスの間にあるが、インターステイトとしては距離が短く(インターステイト=「州をまたぐ」というものの、そもそもメリーランド州内で完結している)、I95の支線のような趣である。


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