ブレトンウッズ協定

バケーションを楽しみに来たかのように、まったくその素振りも見せずに、リゾート地へと向かう男達。だが彼らの胸の中には、戦後の世界経済をだれが支配するか、欲望と陰謀が渦巻いていた。
こう書くと何かスパイ小説、あるいはインサイダーとか○○マフィアとか呼ばれる者達を扱った政治経済小説のように聞こえるだろう。だがそれと似たような光景が、ここニューハンプシャー州の山岳リゾート地で確かに見られたはずである。まだ太平洋での戦争が続いていた1944年、連合国44ヶ国の経済・通貨担当者が、戦後の経済通貨体制の枠組みを決めるために集まった。その中には、著明な経済学者にしてアメリカ一国が経済覇権を握ることに抗しようとするケインズ卿(英国政府代表)、アメリカの戦後世界経済支配の青写真を描いていたホワイト氏(アメリカ政府代表)、それに直接枠組みには参加しないながらもソビエト政府の代表団も含まれていた。