スミソニアン協定

マーケットは政治とは無関係ではない。けれども、政治がもろに介入する(しているように受け取られる)のを嫌う。特に通貨政策は各国の中央銀行の専権事項とされている。政治的であって、政治的でない。通貨政策にまつわるこの独特のニュアンスを表現する場所として、議場に選ばれたのがスミソニアン博物館であった。
アメリカの首都であり根っからの政治都市ワシントンDCに各国から当局者が集まって協議すること自体、ドルが基軸通貨であること、そしてその地位を守ろうとする意図の現われである。だからと言って、財務省で会議を開くわけにはいかない。露骨にアメリカ政府が介入しているように取られてしまうからだ。そこで、中立性と科学的合理性(それはマーケットの合理性と相通じる。対局にあるのが政治的恣意性)を演出できる場所として、スミソニアン博物館が議場に選ばれた。そこで協議された結果は、都市名としてワシントンDCを冠するのではなく、スミソニアン協定として名を残している。アカデミズムの無政治性こそが政治的な意味を持つことの一例である。