落流と起業家精神・シルクの町の原動力 | |
写真は大滝と落差を利用した水力発電所。この水力発電所も、SUMが動力源の変化に対応して建設し運営したものである。 | ニュージャージー州パターソンは、パッセイク川(Passaic)中流にある大滝(The Great Fall)のたもとに位置している。大滝の高さは70フィート(約20メートル)あり、アメリカの植民地開拓のころからその存在が知られていた。
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公共交通機関は、ニュージャージー・トランジット(NJ Transit)のメイン・ライン(Main Line)がホーボーケン(Hoboken)から通じている。ホーボーケンへはマンハッタンのミッドタウンの33rd StreetからPATHという地下鉄で行くことが出来る。ホーボーケンから30分、マンハッタンからでも乗り継ぎ時間を含めて1時間もあればたどり着ける距離だが、朝のホーボーケン行き、夕方のパターソン行き以外は便が極端に少なくなるので注意が必要。特に土曜日、日曜日は通勤需要がないため、数えるほどしか列車が運行されない。予め時刻表を調べておいた方がよいだろう。 | 今日ではかつて栄えた産業の多くがアメリカの南西部やさらには海外に流失してしまい、パターソンの工業は衰えてしまった。町中には往時を偲ばせる煉瓦造りの工場跡や水路跡などが残されている。大滝を中心としたかつての工場街はHistoric districtとして保存されている。再開発計画はあるようだが観光化はされておらず、ある意味、落ち着きを持った町になっている。
今回のパターソン訪問は残念ながら車ではないので、ニューヨークの近郊鉄道であるニュージャージー・トランジット(NJ Transit)を使うことになる。ハドソン川のNJ側にあるホーボーケン・ターミナルで、2時間に1本の列車を捕まえてパターソン駅にたどり着いた。アメリカは車社会であり、ニューヨーク・マンハッタンへの通勤に鉄道を使うことはあっても昼間に奥様方が電車に乗って都心のデパートにお買い物ということはまずない(共働きか、奥様が買い物に出掛けるとしても車でショッピング・モールへ出掛ける)ので、マンハッタンから40km程の「大都市近郊」であっても鉄道はこのような有り様である。 パターソンの駅は高架になっていて、プラットフォームから町を見下ろすと白亜の時計台が見えた。市庁舎の時計台で、市内の至る所から眺めることができる。Market Streetという通りがパターソンの目抜き通りになっていて、町はずれにある駅から、市庁舎や銀行などがあるビジネス街を通って、大滝周辺の工場街まで、パターソンを貫いている。最初の目的地は2 Market St.という通りの端っこにあるパターソン博物館で、途中、市庁舎付近も通るがその周辺の観察は後回しにして、まずは博物館で町の情報を仕入れようと思う。 |
パターソン博物館 | |
パターソン博物館はかつての蒸気機関車製造会社Rogers Locomotive Worksの組み立て工場跡を利用している。
道路に面して両開きのドアがずらりと見える。ここから完成した蒸気機関車を出したそうだ。 | |
パターソンの絹産業パターソン市の紋章には桑の木を植える人の図柄が描かれている。養蚕業は絹に関連する産業の中で唯一パターソン市にない産業だそうで(桑を植えてみたが気候があわずに生育しなかった)、この市章の図柄には、蚕を育てるところから製品にするまでの全てを揃えた「シルクの町」を完結させるという意味が込められているという。
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まず最初の展示は染色工程についてだ。と言っても、染色槽と柄杓があるだけである。 だが製品を考えてみると、色は、素材、デザインと並んで重要な要素のひとつである。この意味で、大消費地であり世界の流行の発信地でもあるニューヨーク市に近いというのはパターソンの利点である。マーケットに近く、顧客の好みの色や流行の色をいち早く製品に取り入れることが出来たであろう。
博物館には染め上がった糸も展示してある。写真ではうまく再現できていないが、それでも微妙な色合いの違いがわかるだろう。マーケットのニーズに応え得るだけの染色技術があったということは、パターソンの絹産業が栄えた理由のひとつに数えても良いだろう。 | |
Winder(捲糸機) | |
Warper(整経機=縦糸巻き機) | |
Jacquard(ジャカード紋織機)
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パターソン博物館で各種紡織機を見学した後、博物館とは通りを挟んで反対側に"PATERSON SILK MACHINERY EXCHANGE"と大書きされた建物を見つけた。現在は廃墟になっていて外観だけが残っているが、かつては紡織機を取り引きする会社の建物だったようだ。 壁面に取り扱い商品としてLOOMS(織機)と書いてあるのが読める。以下、WARPERS(整経機=縦糸巻き機), WINDERS(捲糸機), QUILLERS(?), COPPERS(?), JACQUARDS(ジャカード紋織機) & SUPPLIES(消耗品)と列記されている。 ある程度の産業集積があると、それにともなってこうした中古機械市場が形成される。 | |
Union Works
この道を手前の方に坂を登っていくと、大滝がある。 | |
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