スリーマイル島原発

サスケハナ川を渡るペンシルヴァニア・ターンパイク(有料の高速道路)の橋の上からも西向きの場合は左手(東向きの場合は右手)に、スリーマイル島原発の「とっくり型」の冷却塔を望むことができる。特に冬の日は、現在も稼働している1号機の冷却塔から水蒸気が空高く登っているのが目に付く。直接近くに立ち寄らなくても、ペンシルヴァニア・ターンパイクを東西に移動中に目撃している人もいるはずである。
写真は、ミドルタウンのはずれにある丘から遠望したものだが、肉眼だとターンパイクからの車窓も同じように見えるはずである(脇見運転に注意)。

また、ニューヨークとハリスブルグを結ぶAmtrakの路線は、まさにスリーマイル島の対岸を通っている。

1979年3月28日、スリーマイル島の原発が事故を起こし炉心融解、放射能の放出という惨事を招いた。その事故の重大さと商業用の原子炉で起きた事故だったことから、単に技術上の問題だけでなく、その後のアメリカのエネルギー政策や商業用原発の安全性審査にも大きな影響を与えた。
1986年4月26日に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故と並んで、今でも原発事故の(不名誉な)代名詞となっている。

スリーマイル島という地名は聞いたことがあっても、それがどこにあるか正確に言える人は少ないだろう。「島」と言うから、どこか海沿いの島を連想する人もいることだろう。
スリーマイル島は、ニューヨーク・マンハッタンからフリーウェイ(高速道路)を車で4時間内陸に入った、ペンシルヴァニア州の州都ハリスブルグの郊外に位置する。「島」というのは、ペンシルヴァニア州を南北に流れるサスケハナ川がこのあたりでは川幅を広げ、水が滞留して池のようになり、中洲が島に例えられるからである。

スリーマイル島を実際に訪れてみようと思う。
スリーマイル島というのは川の中の中洲の名前であって、行政地名ではないため、手元の道路地図(Rand McNally社発行)には載っていない。観光地ではないため、道案内も出ていないだろう。それでも、巨大なプラントだから近くへ行けばわかるだろうと思って出掛けた。ハリスブルグまでたどり着き、サスケハナ川左岸を走る州道441号を目指すというのがおおまかな方針である。
州道441号は途中までは完全立体交差のフリーウェイになっている。南を向いて車を走らせていると、前方に2筋の煙が天高くまで立ち上っているのが見えてくる。何かプラントがある様子である。
フリーウェイを降りると途端に2車線の田舎道になる。週末のオークション開催日なのか道の脇に車が多く駐車してある。そろそろと進み、村はずれの丘を登った途端、あの「とっくり型」の冷却塔が4本見えた。さっき見えた2筋の煙はそのうちの2本から吐き出されていた。そして、残りの2本は動いていない。
これが、スリーマイル島原発であった。

巨大なとっくり型の塔がスリーマイル島原発のシンボルのようになっているが、これらは冷却塔で、立ち上っている煙も水蒸気である。臨海部に立地して海に廃熱している日本の原子力発電所では見ることのない施設である。

サスケハナ川の川幅が広がり流れが停滞して湖のようになり、フレデリック湖 Lake Frederic と呼ばれている。スリーマイル島は、川の中の中洲と言うより、湖の中に浮かんでいる「島」である。


サスケハナ川を挟んで、スリーマイル島原発を身近に見ることができる。従業員の訓練施設の脇にはペンシルヴァニア州の歴史・博物館協会によって1979年の事故の記念碑が建てられている。

大きな冷却塔の脇に、原子力発電所で実際に核反応が起きる原子炉が納められている原子炉建屋が小さく見えている(左写真)。この中で炉心が融解するような重大事故が起きたのである。
右の写真には、事故を起こした2号炉の原子炉建屋と現在も発電を続けている1号炉の原子炉建屋が並んでいるのが見えている。

スリーマイル島原発の1号炉はExelonという発電・電力卸会社が、イギリスのBritish Energy, L.L.C.と合弁で設立したAmerGen社を通じて、取得、操業している。[Exelon Corp.] 同社はExelon社の原子力発電部門としてアメリカ各地で原子力発電所を買収、操業を行なっている。
9月11日以降警備が厳重化され、「島」に通じる橋の入り口には警察や州兵とおぼしき武装兵も派遣されて警備に当たっている。公共の道路と原発の敷地との境界には青い線が引かれ、この「警戒線」の外側での撮影は自由とのことであるが、外から眺めるにしても誤解を招かないためにも警備に当たっている官憲と十分なコミュニケーションが必要である。

スリーマイル島の対岸には戸数10戸ぐらいの小さな集落があり、なだらかに続く丘は牧草地となっている。のどかな風景の中に大きな冷却塔が唐突に見える。


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