指定区間とは国道の管理区分にかかわる言葉なので、普段耳にすることはほとんどない。なので、まずは国道とは誰が管理しているのかというところから説明しよう。
日本の国道を、道路管理者の立場から定義すると、国が指定して都道府県(政令指定都市を含む)が維持管理する道路ということができる。国道というのは「国の」道路だと思ったらそうでもなく、地方地方が維持管理をすることを原則として、国はそれを全「国」的な道路網としてコーディネイトしようというのが実体である。
さて、国道は原則として都道府県管理なのだが、例外として国(国土交通大臣)が直轄管理する区間も実はある。この国直轄管理区間が「指定区間」と呼ばれている。
なぜ指定区間というかというと、道路法第十三条1に
と定めてあり、例外的に国が直轄管理する区間については政令で指定する、だから指定区間、ということである。
安直だなとオモウ人がいるかも知れないが、実際、安直なのであり、その安直さのおかげで政令そのものは「一般国道の指定区間を指定する政令」などと名付けられている。つまり、指定区間を法的に正確に表現しようとすると「道路法にもとづいて一般国道の指定区間を指定する政令により指定された区間」といこうとになる。くどい。それが法律であり、お役所仕事なのである。
国道が指定区間に指定されるとどんないいことがあるか?
最も大きな違いは、国道の管理費用についてで、指定区間だと国が55%を補助するので、都道府県の負担は45%で済むことになっている(道路法第五十条)。直轄指定しておきながらまだ都道府県に金を出させる仕組みになっているのだが、そこには道路が地元の人が一番よく利用するだろうから地元の負担があってしかるべきだという考えが反映されている。ちなみに指定区間でない(普通の)国道では、道路管理費は全額都道府県の負担になる。
それ以外にも、いろいろ法律で違いが決められているようだが、ここでは省略する。
一般の利用者の立場から見ると、国が直轄管理しているというとつい都道府県管理より「格が上」と見てしまうところがあるが、実際の所、よく整備されている。もっともそういう重要な一級の国道だからこそ国が管理して整備を進めようという意図があるのかもしれない。
指定区間かそうでないかは道路管理上の区分であって、一般利用者には関係ないことである。都道府県管理の国道でも整備が進んでいる国道もあるし、県の道路行政によっては国道と並行している県道の方を立派に整備してもはや国道、県道という「格」そのものがあやしくなっている場合もある。
それでも、指定区間かどうか確かめたいという人は、道路管理のために設けられている設備(ガードレールやポール、街路灯、キロポストなど)に注目すればよい。指定区間の場合は、「建設省」または「国土交通省」という道路管理者を示すシールが貼ってある。指定区間でない場合はその国道を管理している各都道府県名になっている。
シールが都道府県警や公安委員会名になっている場合がある。これは道路管理者とは関係なく、交通管理者を示している(例えば、信号やとまれの標識などは道路としての機能ではなく、道路上での交通を円滑にするためのものである)ので、見当はずれである。
そして、これまで見てきた中で、一番親切に指定区間だということを示しているのがこの標識である。これは千葉県館山市の国道127号の終点に立っているもので、矢印付きでここから指定区間だということがはっきりとわかる(ただし、その後バイパスが完成しそちらが国道127号になってしまい、こちらの道路は県道に格下げになっていまい国道ですらなくなってしまった。今では嘘つき標識になっているのだが‥‥)。
同様の指定区間の境界を示す標識を、もう1ヶ所、国道16号の富津岬で見かけた。こちらの標識はかなり朽ちていたと思う(現状をご存じの方はご連絡ください)。
どちらも千葉県、それも房総地方で、他の地方ではこのような指定区間を標示した標識は見かけたことがない。房総地方の行政担当者が律儀なのだろうか。