【はじめに】
このページは作者個人の英語感覚(アメリカ東部)と日本とアメリカ東部の道路制度、交通事情の比較を元に作っています。もしかしたら間違いがあるかもしれません。また英語としては正しくても、アメリカ東部の言い方や作者独自の言い回しもあると思います。間違いの指摘は歓迎ですが、もしこのページの用語をそのまま使って通じなかったとか誤解されて損害が生じたとしても一切責任は負いません。
また、辞書ではないので、あいまいに「‥‥と言えるかもしれない」という言い方をしていることがあります。同意するかしないかは読者各自の判断に任せます。あいまいな表現をしている用語でも、私が実際に英文を書くときは「こんな感じの表現で通じるだろう」と、そこは自分の英語経験と度胸で書いてしまうと思います。
実用英語として利用して貰ってもかまいません(実際に通じる英語を目指して書いています)が、ここは趣味のサイトですので、日本や主にアメリカの道路制度の違いや言葉の使い方の違いをあれこれ論じるということの方が作っていて愉しかったりします。明らかに間違いとわかる場合にはご指摘に応じて訂正することもありますが、ポリシーを持ってこういう表現がより正しいのではないかと提案している場合にはそれを貫き通すこともありますので、ご了承ください。
1対1で置き換えることのできる訳語というよりは、日本(アメリカ)の社会、交通事情に例えるとこういうことだろうと言う「感覚」を紹介していることもあります。
このページで紹介している用語や開陳している意見には、既に国道MLで書いたものを元にしていることがあります。
海の中を続いていく1本の道。車を走らせれば海原を渡っていく気分が味わえて愉快な道である。
ところが「海中」をそのままunderseaとかsubmarineと訳してしまうと、水没道路になってしまう。ここはoverseasを用いて、"overseas road"という。overseasという言葉は「海外」とか「外国の」という意味が強くて、手元の研究社の英和辞典にもその意味しか載っていないが、字面通りに「海を渡っていく」という意味でここでは用いている。
海中道路で有名なものに、フロリダ州のフロリダ・シティから島伝いにキーウェイストに至る延々200km以上を海の中を走っている道路があって、中にはSeven Mile Bridgeのように個別に有名になっている橋もあるが、道路全体は定冠詞を付けて"The Overseas Highway"という。さすがに200kmも続くので、単なる道路というよりは、街道"Highway"と言うのがなんともふさわしい。
日本の西瀬戸自動車道(尾道−今治)を「しまなみ海道(かいどう)」と言って「街道」と「海の道」を掛けてあるが、英訳すればまさしく"Overseas Highway"になるだろう。
そもそも海中道路に一般的な定義があるかどうかは知らないが、道路探検家として個人的に定義すると、(1)湾や水道を横断し、または島と本土とを結びつけるために海中に通された道路のなかで、(2)トレッセル橋や埋め立てによる土手が大部分を占め、(3)海面近くを走っている雰囲気を味わえる道路となる。吊り橋はまず含めない。 また、湖を横断する道路で同様に湖面近くを走っている雰囲気を味わえる場合には、これを含める。
Causewayという言葉は湿地帯や湖の中に通した土手道のことだが、ルイジアナ州ニューオーリンズのポンチャートレイン湖横断道路"Lake Pontchartrain Causeway"(ポンチャートレイン湖を横断する38kmの道路で連続する桁橋としては世界最長。2本の橋が並行して走っている)のように海中道路の名称に用いられていたりする。Causewayといっても土木構造は実際には桁橋になっている。
沈む夕日を見ながら海中道路を車を走らせる 【写真:ノースキャロライナ州US-158 ライト兄弟記念橋】 |
昔読んだ幕末の日本を扱った論文に"Nagasaki Highway"と書いてあって、違和感を感じた経験がある。「ナガサキ・ハイウェイ」と言っても今日の高速道路・長崎自動車道のことではもちろんなく、幕末の志士達が西洋の知識を習得しようと出島にある長崎にはるばると赴いた「長崎街道」のことである。
英語の"Highway"の本来の語感は、都市と都市とを結ぶ(地理学の用語で言うと「高次の」)道路という意味である。日本語で「ハイウェイ」というと高速道路のことを思い浮かべるが、必ずしも「高規格」の道路である必要はない。歴史的な含意もないので、江戸時代の「街道」から今日の「全国的な道路網」まで広く使える。
私はこの英語の意味で、「日本の道路網」を意味するJapanHighway.Networkなるドメインを取得していたりする。
NJ州ハイランド・パークに設置されたリンカーン・ハイウェイの標識。州道27号はかつてのリンカーン・ハイウェイにあたる。
町中を通っている普通の道もハイウェイと呼ばれる。 |
"US Highway (System/Network)"とか"Interstate Highway (swystem/Network)"という場合は熟語になって、それぞれ全米的に整備された近代的な、高規格の道路網を指すが、この場合でも"Highway"が強調しているのは「全米的な道路網」ということであって、道路の規格については言葉の意味にはない。もっとも現代では全国的な道路網=高速度自動車移動を意味することが多いが【高速道路 Expressway】。
話をナガサキ・ハイウェイに戻そう。江戸時代以前の「街道」に"Highway"という言葉を使うのには日本語の感覚に慣れてしまって違和感があるという人は、"Historic Highway"とか"Traditional Highway"と言ってもいいかも知れない。これらを厳密に日本語に訳し返すと「歴史街道」とか「古来からの街道」という意味になるが、例えば"Tokaido Historic Highway"という場合は「旧東海道」ぐらいの訳に相当するだろう。
今日の交通路の意味で「東海道(例えば、静岡県内をR1で横断したり、四日市→R25→R1(鈴鹿峠)→草津と抜けたりする場合)」と言う場合は、"Tokaido Corridor"(東海道・回廊)、"Tokaido Route"(東海道・ルート)などと言うといいだろう。山陽道、北陸道なども同様である。
Interstate Highwayの大都市周辺の環状道路のナンバーの割り振り方についてはまた機会をみて書くとする。
とりあえずは、自動車での「高速度移動」という観点に着目して"Expressway"という言葉を当てておく。
高速道路を厳密に英語に訳すというのも、案外難しい。国によって道路制度が異なっているというのもあるのだが、それ以上に高速道路という言葉が2つの意味を含んでいるからである。こう言うといぶかしがられるかもしれないが、実際日本の高速道路を見ても東名、中央、名神のように「‥‥高速」と呼ばれているものと、中国、北陸、東北のように「‥‥自動車道(道)」と呼ばれているものがある。
これは高速道路の思想史にかかわってくるのだが、前者は「高速度で移動できる」という移動の面に重点を置いたもの、後者は高速度で移動できる「全国規模の新しい幹線道路」(国土開発幹線道路)という面に重きを置いたものである。後者の議論では、幹線道路は全国の都市と都市とを結んで国土を一体化するものだから、高速度で移動できる規格でないと意味がないという話になって、全国的な道路網=高規格道路と当然のように考えている。ここから、日本では高速道路のことを、英語の本来の意味は「全国規模の都市間道路」である「ハイウェイ」と呼び慣わしたりしている。【参考:街道 Highway】
ヨーロッパでは、ドイツのアウトバーンを始め、従来の馬車交通に対する「自動車道路」という言い方をする。イギリスの"Motorway"、フランス語圏の"Autoroute"という具合である。
日本の高速道路は法律上「高速自動車国道」と規定されているが、「高速」「自動車」「全国的な道路網」という概念を全て盛り込んだ用語であることがわかる。ただ、これらの概念には三位一体のところがあって、普通はどれかひとつかふたつで高速道路を表現するというのも見てきたとおりである。
余談だが、新しい幹線という用語を以て高速度の交通体系を意味するのは、道路制度だけではない。鉄道の「新幹線」ももともとは「新しい幹線(鉄道)」という意味であって、高速度の文字はどこにもないが、在来の幹線鉄道があるところにさらに莫大な投資をしてもう1本鉄道を通すのだから、高速で大量輸送の出来る規格でないと実際上意味はないことは明らかである。新幹線の英訳も直訳の"New Trunk Line"や"Bullet Train"(弾丸鉄道)などいろいろあったが、結局は"Shinkansen"そのままで広く英語圏にも知られることになった。これは「在来鉄道に並行し、閉鎖的な体系を持ち、高速度で、大量輸送」というコンセプト全体が極めて独創的だったということを示している。
広義に高速鉄道を指す場合には"High Speed Train"と呼ばれる。これはもう速く走ればそれでいいという考え方だから、在来の路線をそのまま用いて1時間に1本という運行頻度のTGVなども含まれる。
"Shinkansen"的な言い方が"Highway"で、"High Speed Train"的な言い方が"Expressway"に相当する。
さて、英訳だが、「高速自動車国道」の意味を汲んで"Express Motorway"(高速自動車道)、"Express Highway"(高速国道)という言い方も出来るかもしれない。どちらかというと前者はイギリスっぽい表現だろうか。
アメリカの道路地図である"Rand McNally"の表現に従うと、"Toll Access-Limited Highway"となるだろう。
他に"Speedway"という言い方もあるらしいが、私の英語の感覚では「レース場」を指すので高速道路の意味では使わない。サーキット族がぐるぐる回る首都高都心環状線や、中央道の山梨県の直線区間を「レース場」にたとえて言う場合には、使うかもしれないが。
アメリカの高速道路については、"Freeway"と"Interstate Highway"というまた独自の道路制度と概念があるので、[日本語に訳しにくいアメリカの道路用語]のコーナーで個別に解説したい。
国道を直訳すると"National Road"となる。これでも間違いとは言えないと思うが、英語のニュアンスを日本語に訳し返すと「国家の道路」という感じだろうか。平城京の朱雀大路のような、ローマの大帝がお出ましになる道ような、国家の威信をかけた道路という気がしないでもない。
アメリカでは、道路は基本的に各州の管轄で「国家の‥‥」という概念はないし、例え連邦政府が管轄する道路があっても「連邦の道路」"Federal Road"と言うので、"National Road"に相当するモノを探すのは難しい。かつて19世紀前半のアメリカ開拓時代に、ポトマック川から内陸のオハイオ川の水運までをつないだカンバーランド道路 (Cumberland Road)が内陸開発を目的として連邦の補助で建設され、"The Natioanl Road"と呼ばれたことがある。このルートは、今日フリーウェイ(I-68)となって"National Freeway"と呼ばれている。「建国の道」という感覚だろうか。
国道を「全国的な道路網」の意味で"National Highway"というのが良いだろう【参考:街道 Highway】。私はあちこちでこの訳語を使っている。
国土交通省など日本の役所の文書の英語訳でも"National Highway"が使われる傾向にある。
(一般)国道を、高速道路(高速自動車国道)や自専道などの高規格道路と区別して「下道(したみち)」ということがあるが、この場合は"Conventional (National) Highway"「在来の国道」と言うのがいいかもしれない(新幹線"Shinkansen"に対する在来線の英訳は"Conventaional Line"となる)。
日本人の英語で「普通の」という意味を持たせて"Ordinary Road"と言った人もいるそうだが、これでもいいように思う。
上記の言い方はいずれも道路の規格の違いを言ったものだが、これでは、日本的な「金がもったいない、時間がかかる」という下道の感覚はなかなか伝わらない。これはアメリカの幹線道路網はほとんどがフリーウェイ(アクセス制限+無料)か有料道路であっても料金が日本と比べて格段に安いので、経済的な選択肢としての下道の概念はないからである。"To choose toll-free conventional highway route as an alternative to toll express highways"「有料高速道路の代替路として無料の在来国道を選ぶ」が適訳だろうか。その後に「ニューヨーク市からオルバニーまで行くのに100ドルのトールを払うか?そいつは馬鹿だろう」と付け加えれば、会話も弾むだろう。ロスとサンフランシスコに置き換えてもいい。説明しておくと、両者の距離は感覚的に東京−大阪に匹敵し、ニューヨーク市−オルバニー(ニューヨーク州の州都)は有料道路を経由しても料金はせいぜい5ドル、ロスとサンフランシスコの間はまったくの無料である。
アメリカでは高規格のハイウェイ(特にInterstate Highway)では道路の両脇に森林帯が設けられることが多く(東部)両側の景色がまったく単調になってしまうので、そうしたルートと区別するために"Scenic Route"という言い方がある。また、道路探検活動本として高く評価しているJamie Jensenの"Road Trip USA"には"Exit the Interstates"というキャッチコピーが付いているが、それはわざわざ古くからの田舎道をつないだようなハイウェイで町から町を訪ねてその土地の風俗や景観を愉しもうという趣向である。
いずれにしても、アメリカではものずきな趣味人がわざわざ「下道」を選ぶのである。
(あ、これは日本でも同じか‥‥)
使用例: | go through Tokaido Corridor (静岡県をぶっちぎる時など) |
choose Tokaido Route (R1で鈴鹿越えなど) |
有料道路と一般的に言う場合は"Toll Road"でよい。ただ、日常会話で使うときは"Turnpike"という。
Turnpikeの語源である「跳ね上げ棒」式の料金所 【写真出所:アメリカ連邦交通省道路局編、別所正彦、河合恭平訳『アメリカ道路史』原書房、1981年 】 |
料金所渋滞はアメリカでも変わらない。
空いている左車線は料金自動徴収装置EZ-Pass専用レーン。紫色の案内がブースの上に上がっている。 【写真:NJターンパイクにて】 |
【引き続き執筆中です】
アメリカのハイウェイ(特にUS Highway)を走っていて町に近づいてくるとこのサインを時々見かける。アメリカのハイウェイはInterstateはもちろんのことUS HighwayやState Roadも市街地(ダウンタウン)をバイパスするように敷かれている。少し大きめの市や町ではそういう郊外の道路の周辺には大規模なショッピング・モールができていて逆に自動車社会に対応した商業地帯となっているのだが、小さな町では集落の中を貫通しているメインストリートが全てという場合も多い。そういう場合はハイウェイをそのまま走っていては何もないままに町を通り過ぎてしまうので、郵便局や銀行に用事があったりちょっとした日用品を買いたいという「用事 "Business"」がある場合は、Business Routeのサインに従って道を逸れるとダウンタウンに行くことが出来る。
Business Routeと言う場合は、単に本来のルートから外れるのではなく、そのまま進むと元のハイウェイに再び合流できるようになっている。無駄なく寄り道が出来る。
日本でいうとさしずめ「旧国道」「旧街道」という感じだろうか。昔ながらの商店街の間を通っている道を思い出してもらえばいい。
ただ日本ではバイパス沿いには瞬く間にラーメン屋だのショッピングセンターだのできてしまって、ダウンタウンに「迂回」しなくても用事が済むことが多いが、アメリカのちょっとした田舎(東部でもちょっと都市から離れると)では本当に畑の中を道が一本という状況になってしまうから、business routeはなるほど親切な標示である。
【執筆中です】
中央フリーウェイ♪(笑)
アメリカで最初のパークウェイと言われているブロンクス・リバー・パークウェイ(ニューヨーク市)。石造りの桁下高の低い橋がアーチを描いて、ピクチャレスクな景観を作り出している。 |
トラックはパークウェイ"PKWY"を利用しないように呼びかける標識。ニューヨーク市ブロンクスのクロス・ブロンクス・エクスプレスウェイ(I-95)にて。「物理的に」トラックが通行できないように立体交差の跨道橋の桁下が低くしてあり、その旨警告標識(黄色の四角)が書いてある。 |
Parkwayとは文字通り「公園」と「道路」との組み合わせた言葉で、道路の両脇に造園を施して、まるで公園の中を通っているようにした高速道路のことである。上下線が大きく引き離してあり、道路の両脇や中央分離帯には植林がしてある。ニュージャージー州のガーデンステイト・パークウェイ"Garden State Parkway"では誇道橋が趣のある石造りのアーチ橋に統一してあり、石橋の下をくぐって車を走らせていくとなるほど庭園の中を通っている気分にもなる。「田園の州」というニックネームを持つニュージャージー州の面目躍如といったところである。
日本でも最近は景観に溶け込むような道路設計というのがなされているが、パークウェイの場合は景観への配慮というよりは、田園風景をテーマにした道路設計、いまの言葉で言うならばテーマパーク的道路なのである。そして、田園的な雰囲気をぶち壊すということだろう、パークウェイはトラックの通行を禁止している。日本では見かけないコンセプトの道路である。
この背景には、産業用道路とレジャー用道路を分離すべきだという道路論争があるのだが、それの解説はまた時間のある時にでも。【引き続き執筆中です】
先述のニュージャージー州の"Garden State Parkway"の他に、ボルチモアとワシントンDC間の"Baltimore Washington Parkway"や、ニューヨーク市周辺にいくつかパークウェイがある。田園風景のテーマパーク的道路だから、そうした景観に憧れる東部の大都市周辺に多いのも納得がいく。
"Garden State Parkway"は有料だが、他は無料で、通行料を取るか取らないかはパークウェイの概念とは直接関係ない(大都市周辺の通勤用路線としてパークウェイのコンセプトで道路を建設し、営業的に有料道路が成り立つということはあるが)。