真山の万体仏


男鹿半島の真山神社へ向かう途中に、小さな御堂があった。道路から少し高いところにあり見落としそうなところだが、 文化財を示す標柱を見かけ、ちょっと立ち寄ってみようかという気になって車を停めた。
御堂の世界にすっかり感じ入ってしまった今となっては、これもなにか仏縁があったのだろうと思えてくる。

堂内に入って息を呑んだ。
万体仏という名の通り、壁から、天井から、夥しい仏像で埋め尽くされていたのである。それぞれは10センチほどの小さなもので、 目鼻が刻んであるだけの造形的には簡素なものではあるが、濃厚なまでの信仰心で満ちていた。男鹿半島の精神文化の奥深さを 覗き見た気がした。

面白いことに、両壁の手の届く範囲の御仏には、頬かむりよろしく、紙縒りが巻きつけてある。紙でなく稲藁で代用している ところもある。どちらが発祥かは分からないが、もしかすると以前は稲藁が主流だったのかもしれない。
願掛けであろうか。
仏の数といい、紙縒りの数といい、数の多いというそれだけで、切実なまでの仏への帰依が伝わってくる。

御仏に囲まれた空間というのは、大分県の 国東半島・富貴寺の極楽浄土の御堂での体験を思い出した。あちらは明確に極楽浄土というモチーフを持っていた。
真山の万体仏堂は、もしかしたら極楽浄土ということは明確に意識されていないのかもしれない。だが、仏の領域は雲で仕切られて いて、そこにぎっしりと立ち並ぶ仏の姿は、現世とは違う仏教世界を表現していることは確かだと思う。

この御堂は、金剛童子堂として建てられたものであるという。

真山の万体仏
真山の万体仏
真山の万体仏
真山の万体仏

真山の万体仏

[真山の万体仏 その2へ進む]

[戻る]

(C) TTS 2000-2009, All rights reserved