ワシントンDCの地下鉄乗車日記

Washington D.C. METRO

【乗車日記】
所用でピッツバーグに出かけた帰り、ちょうどその日は日本から知り合いがワシントンDCに着くフライトでやってくるというので、出迎えにワシントンDCに立ち寄ることにした。ピッツバーグからの夜行バスは朝の4時40分に早ばやと到着。定刻きっかりだった。とりあえずバスターミナルから、近のくにあるAmtrakのユニオン駅に移動して、そこで夜が明けるのを待った。ベンチで横になるのを警備員に注意され、ようやく開きはじめたコーヒースタンドで朝食を食べ、それでも昼過ぎの待ち合わせ時間まで時間は有り余っている(かと言ってどこか見に行くと、知り合いが行きたいと言ったときにこっちは2度目でつまらない思いをするので観光も自粛)ので、地下鉄の1本(路線)でも乗り潰そうかと思い立った。地下鉄だから、車窓もないし、睡眠不足を補うべく寝ていられるのがいい。
ちょうどその日は週末で、地下鉄は朝8時から運行を始める。平日は朝5時半からで普通の始発時間であり、政治都市ワシントンDCのリズムである。
アメリカの首都ワシントンDC(コロンビア特別区)には、全部で5路線の地下鉄が運行されている。各路線は色で識別されていて、レッド、オレンジ、ブルー、グリーン、イエローの各色が路線名になっている。このうち、現在いるユニオン駅を通っているのはレッドラインで、この路線を乗ることにする。

レッドライン(RED Line)の車両。車両自体も赤系統で、"RED"と掲出してある。

まずはGlenmont方面へ。ニューヨーク市の地下鉄はUptown/Downtownで方向を示すのでわかりやすいが、ワシントンDCの場合は、終着駅の駅名で方向を示すようだ。発車するとまもなく地表に出て、しばらくはAmtrakの線路と並走する。このまま郊外になり地表を走るのかと思ったら、また地下に潜りだす。当初の予定通り、車窓が暗くなると寝てしまった。
気がつくと終着駅Glenmontに到着していた。ユニオン駅で買ったカフェイン抜きのコーヒー(デカフ)がすっかりぬるくなっている。そのまま車内に留まり折り返す。どうやら運転士の女性も、折り返し運転していくようだ。彼女は車両の反対側に向かう。
復路も良く寝れて、気がつくと終点Grosvnerに着いていた。この列車はここから回送になるというので、今度はいったんプラットホームに下りる。Grosvnerもまた地上の駅で、4月だが、ちょうど寒気が入った朝で、未明には雪もちらついていた。冷えた空気がすがすがしい。まわりにはアパートらしき建物が見えるが、郊外らしく木々に囲まれていてそんなには見えない。ときどき、同じような建物でホテルだったりする。
ここでうっかりしていたのは、この列車の終点はGrosvnerだけれども、路線の終点はあと4駅先のShady Groveだということである。とはいえ、この先のShady Grove行きの列車はなかなか来ない。時計と相談した結果、レッドラインを乗り通すという当初の計画はあきらめてダウンタウンの方に戻ることにした。計画完遂ならずも、行きも帰りも地下鉄の中ではよく眠れた。

写真は途中で引き返したGrosvner駅にて。集電用の第3軌条が見える。


ワシントンDCの地下鉄は新しいだけあって、NYCの地下鉄などと比べるときれいで清潔な感じがする。
駅の壁面は、シールド工法のセグメントが剥き出しのデザインになっている。天井は高く、シールドの半円内に2階分収まる程の高さがある。1階部分がプラットホームで、2階部分にチケット売り場や改札が設けられていて、さらに上がって地上という構造である。単純でわかりやすく、また空間を広く取っているので、圧迫感がない。見通しが利き死角も少ないことは、優れている。
列車の右下に写っている白い帯が明かりになっていて、セグメントの曲線を生かした間接照明になっている。ホームの端は、色分けしてあるとともに、ライトでスポットを作り出して視認性を高めている。照明についても洗練されている。
この写真はユニオン駅で撮影したが、どの駅も全く同じようなつくりになっている。線路は複線、右側通行で、運行の支障にならないよう停車中に後方から撮影した。

 このサイトはd.c. metro unionの一員です

FARECARDについて

ワシントンDCのメトロには普通の切符がない。と言ってしまうと誤解を招くが、すべてストアド・フェア・カード FARECARDになっている。
つまり、1回だけ乗車するのでも、その乗車分の金額をストアしたカードを買う(自分で必要な乗車分だけに絞った金額のFARECARDを作る)必要がある。その手順を記すと
  1. メトロはオン・ピークとオフ・ピークで運賃が違っているので、まず目的地までの金額を把握する。中心部とアーリントンぐらいであれば、オフ・ピークは$1.15である。
  2. 次に券売機の前に行き、FARECARDにストアする金額を決める。△▽のキーを動かして5¢単位で金額を上下させることができる。$1.15にする。
  3. 指定した金額を投入して、カードにストアする。発券される。
  4. 自動改札機を通る。カードは入れたところからまた戻ってくるので、取り忘れないように(入れると同時に2、3歩歩いて先の方でピックアップするというのは日本だけらしい)。
  5. 目的地の駅に着いたら、また自動改札機を通って出る。この時、カードにストアされている金額が0になっていれば(そのカードをちょうど使い切っていれば)カードは回収される。表示窓にも回収される旨の表示が出る。
    少しでも金額が残っていればカードは戻ってくる:この時は、入場時と違って、少し先の方からカードが出る。

FARECARD remaining 5 cent valueという仕組みを利用して、最小限の無駄でFARECARDを手元に残したのが右のカードである。ストアするときの金額が5¢単位なので、乗車に必要な$1.15に5¢を追加した$1.20を最初にストアしておく。そうすると、出場時に5¢のお金が残っているカードと判断されて無事手元に戻ってくるのである。VALUEのところに、00.05と残額が表示されているのがわかる。このカードに継ぎ足すなり、出場時に清算すれば、ちゃんと5¢分の金券として機能する。
本当はこんな使い方ではなく、同じ駅の間を行って帰って単純に往復するのなら$1.15の2倍の$2.30をあらかじめストアしておけば、帰りは切符を買う必要はない、というふうに使うものなのだろう。
自分で金額を指定するストア式の他に、1日乗り放題のFARECARDもあるので、あちこちを回る場合にはこちらの方が便利だろう。

前置きが長くなったが、このカード、2001年が1976年のメトロ開通から25周年になることを記念するものである。それで5¢を投じて手元に残したのである。メトロの車両と、シールド工法のセグメントむき出しの円いトンネルは、なるほど特徴をよく表わしている。
文字が潰れてしまったところには、CELEBRATING THE PAST, BUILDING THE FUTUREと書いてある。


2001年12月追記


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2001年12月追記 (FARECARD)
2000年4月