ピッツバーグのインクライン

ピッツバーグにはインクラインが、モノンガヘラ(Monongahela)と(Duquesne)の2路線残っている。私が訪れたのはそのうちのモノンガヘラの方である。近年再開発され奇麗なショッピングモール(ビジネスやホテルを加えた複合施設)に生まれ変わったステイション・スクエアと隣接していて、またダウンタウンとはライトレイルで結ばれているので、観光客にも人気がある。登りつめた丘の上には展望台が設けられていて、ピッツバーグを見下ろすことができる。

とはいえ、このインクラインは観光用に設けられたのではなく、もともとは地元の住民の足として1870年に運転を開始した。ピッツバーグはオハイオ川の作り出した谷間に広がる鉄の街である。低地にたち込める煤煙を避けるために、住宅地は河岸段丘上に開発された。インクラインは、そうした丘の上の住宅地と谷底の街とを結ぶ役割を果たしてきたのである。かつては15路線もあったが、自動車交通の発達によって、今では前述の2路線が残されるのみとなった。
今でも地元の買い物客や通勤客の姿を見かける。こうした地元の人の利用もあってか、ライトレイルとの乗り継ぎ(transfer)を利用すると、片道$1.25に割引される(通常片道$1.50)。料金所は丘の上にしかないので、行きはライトレイルの車内で運転士に料金を払う時に申告し(ライトレイルの運賃の払い方は、降りる時に運転士が見ている前で料金箱にお金を入れる仕組み。ワンマン)、帰りは丘の上の駅でインクラインの料金を払う時にライトレイルの乗り継ぎチケットをもらうようにする。

(下の写真)赤い屋根が見えるが、これは元々は鉄道のヤードに付属していた貨物倉庫を再開発した、ショッピングモール。ステイション・スクエアの中心施設である。

インクラインの車両から足元を見下ろす。かなりの傾斜である。
パンフレットによると、35度35分の傾斜とのこと。
その他の諸元は次の通り
全長635フィート
高度差367.39フィート
スピード時速6マイル
客数25人
開業1870年5月28日
改修1882年、1935年、1982-83年、1994年の4回
1935年にそれまでの蒸気機関から、電気モーターに取り替えられている。

鉄道の線路を跨ぐようにして斜面に取り付いていくインクラインの軌道。
ケーブルカーとインクラインの違いについて、ケーブルカーは傾斜した地面に直接レールを敷いたものだが、インクラインはこのように人工的に坂を作ってその上に走らせたものだと聞いたことがある。
詳しいことをご存知の方はお知らせください。



展望台からピッツバーグのダウンタウンを見下ろす。
右下に見える古風な建物は、かつて鉄道会社の本社であった。今はステイション・スクエアのランドマークである。
その旧本社ビルのところからダウンタウンに架かる橋は、スミスフィールド通り橋(Smithfield Street Bridge)。トラス構造が横から見ると凸レンズの形をしているため、レンズトラス橋(レンティキュラートラス橋)と呼ばれるユニークな橋だ。この橋には歩道が整備されているので、ダウンタウンまで歩くのもいい。中心街まで10分、デイヴィッド・ロウレンス会議場があるあたりまで歩いても20分の距離である。
川面にはバージ(はしけ船)が石炭を運搬しているのが見える。そうピッツバーグは鉄の街である。

もうひとつのインクラインDuquesne Inclineは結局行くことができなかった。
また、ライトレイルもダウンタウンこそ地下に乗り入れているが、その他は地平を走っていて、モノンガヘラ川を渡る橋や、52番系統の登攀区間・道幅いっぱいに車両が走る区間等見所もたくさんあるが、写真は撮れずしまい。残念である。

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