ニューアーク・ペンステイション


Pennsylvania Railroad(写真ではroadの部分が切れてしまっている)の文字がファサードに掲げられている。植物をモチーフにしたアールヌーボー様式の装飾が施されている。

ニュージャージー・トランジットのニューアーク駅は、普段ペンステイションと呼ばれている。かつてのペンシルヴァニア鉄道のターミナルだった頃のなごりで、ペンシルヴァニア・ステーションが縮められてこう呼ばれる。正式名称は、ニューアーク市のという冠がついて、ニューアーク・ペンシルヴァニア・ステーション(Newark Pennsylvania Station)という。ニューアーク市にはもうひとつ駅があってこちらはブロード・ストリート駅と言うが、こちらも正式名称はニューアークが頭に付く。どちらか一方にニューアーク駅と名乗らせてもう一方は別の名前を付ければよいところを、両方ともニューアーク市にある駅という扱いにして互いに区別するためにペンシルヴァニア鉄道の方は会社名で呼び慣わす。私鉄会社がめいめいに線路を延ばして互いに譲らなかった、アメリカの鉄道の発展史をしのばせるような駅名の付け方である。合併してニュージャージー・トランジットになっている今でも、この伝統は引き継がれている。

ニューヨーク市マンハッタンのターミナルもペンステイションであり、事情は全く同じでニューヨーク市のペンシルヴァニア鉄道の駅という意味である。会社名の付く駅はあちこちにあってもいいはずだが、ニューヨーク市の玄関口としてこちらのほうが有名なだけに、ニューアークにも同名の駅があるのかと軽い驚きとともに受け止められることが多い。だが、ニューアークもペンステイションの名に恥じずペンシルヴァニア鉄道会社の主要なターミナルのひとつであり、その証拠に同社はかつて威容を誇ったニューヨーク・ペンステイションの駅舎(1963年に取り壊されて、現在駅の地上部分はスポーツアリーナのマジソン・スクエア・ガーデンになっている)と同じ設計陣に命じて会社名を冠するターミナルにふさわしい駅舎を建設した。それが、現在も使われているニューアーク・ペンステイションの駅舎である。
ニューアーク・ペンシルヴァニア・ステーションは、ニューヨーク・ペンステイションの駅舎が残っていない今、ペンシルヴァニア鉄道の威光を感じ取ることの出来る貴重な建築物である。

ニューアーク・ペンステイションは、ニューアーク川に隣接して建てられていて、川を渡る可動橋のタワーがまるで駅のゲートのようだ。プラットフォームの端からは、ごちゃごちゃした構造の可動橋をくぐって駅に進入してくる列車の迫力ある姿を見ることができる。


ホールのドアにはPennsylvania RailRoadの頭文字PRRを組み合わせた社章が残る。PRRを取り囲むのは、建築学で言うアーチの頂点にはめ込む要石(キー・ストーン=Key Stone)を模したもので、ペンシルヴァニア州が愛称「キー・ストーン・ステイト」と呼ばれていることにちなんでいる。独立13州の南北ほぼ中央に位置するとともに、古くから開発が進み石炭、鉄鋼製品、農作物といった物資の東部における主要な生産地になっていて経済的なウェイトも大きかった。ペンシルヴァニア鉄道会社が発展したのも、こうした物資を内陸から沿海に運ぶ需要があったためである。
植物をモチーフにしたアール・ヌーボー様式で装飾されている。


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【類似表記】
ニューアーク・ペン・ステーション、ペンシルバニア・ステーション、ペンシルバニア鉄道

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