街道 Highway

昔読んだ幕末の日本を扱った論文に"Nagasaki Highway"と書いてあって、違和感を感じた経験がある。「ナガサキ・ハイウェイ」と言っても今日の高速道路・長崎自動車道のことではもちろんなく、幕末の志士達が西洋の知識を習得しようと出島にある長崎にはるばると赴いた「長崎街道」のことである。

英語の"Highway"の本来の語感は、都市と都市とを結ぶ(地理学の用語で言うと「高次の」)道路という意味である。日本語で「ハイウェイ」というと高速道路のことを思い浮かべるが、必ずしも「高規格」の道路である必要はない。歴史的な含意もないので、江戸時代の「街道」から今日の「全国的な道路網」まで広く使える。
私はこの英語の意味で、「日本の道路網」を意味するJapanHighway.Networkなるドメインを取得していたりする。

NJ州ハイランド・パークに設置されたリンカーン・ハイウェイの標識。州道27号はかつてのリンカーン・ハイウェイにあたる。
町中を通っている普通の道もハイウェイと呼ばれる。
アメリカで"Lincoln Highway"というと、1913年に民間の団体が制定した全国規模のトレイルのことで、それこそ細いうち捨てられた旧道をたどって当時のマーカーを探し出すような歴史探訪の趣味対象になってしまう。この意味では日本の旧街道を探索して歩くのといっしょである。

"US Highway (System/Network)"とか"Interstate Highway (swystem/Network)"という場合は熟語になって、それぞれ全米的に整備された近代的な、高規格の道路網を指すが、この場合でも"Highway"が強調しているのは「全米的な道路網」ということであって、道路の規格については言葉の意味にはない。もっとも現代では全国的な道路網=高速度自動車移動を意味することが多いが【高速道路 Expressway】。

話をナガサキ・ハイウェイに戻そう。江戸時代以前の「街道」に"Highway"という言葉を使うのには日本語の感覚に慣れてしまって違和感があるという人は、"Historic Highway"とか"Traditional Highway"と言ってもいいかも知れない。これらを厳密に日本語に訳し返すと「歴史街道」とか「古来からの街道」という意味になるが、例えば"Tokaido Historic Highway"という場合は「旧東海道」ぐらいの訳に相当するだろう。
今日の交通路の意味で「東海道(例えば、静岡県内をR1で横断したり、四日市→R25→R1(鈴鹿峠)→草津と抜けたりする場合)」と言う場合は、"Tokaido Corridor"(東海道・回廊)、"Tokaido Route"(東海道・ルート)などと言うといいだろう。山陽道、北陸道なども同様である。


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