インターステイト・ハイウェイ網

アメリカのインターステイト・ハイウェイの路線番号は、単に路線を識別するための固有番号ではなくて、数字そのものに意味を持たせるコードになっている。基本路線は1桁または2桁で、東西を結ぶ路線には南から北の順で偶数が、南北を結ぶ路線には西海岸から東海岸の順で奇数が付けられる。
さらに、東西の路線でも大陸を横断する主要路線には下一桁が0(10,20,30, ... ,90)が、南北の中でも国土を縦貫している路線には下一桁が5(5,15,25, ... ,95)の路線番号が割り振られている。
つまり、東西の大陸横断路線は、フロリダのジャクソンヴィルからメキシコ湾岸を横断して西海岸のロサンゼルスに至る路線がInterstate 10 から始まり、ボストンからシカゴを経てワシントン州シアトルに至る路線がInterstate 90 となっている。南北の縦貫路線は、西海岸のカナダ・バンクーバーとの国境からワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州と縦貫してメキシコのティファナに通じている路線がInterstate 5で、東海岸のメーン州から東部諸州のいわゆる「北東回廊」を通りフロリダへ通じる路線がInterstate 95という具合である。

さて、こうした路線番号割り振りのルールを踏まえて、アメリカのインターステイト・ハイウェイ網を模式的に表わしてみたのが下の図である。0番台と5番台の主要路線に、4,8,76,87の各路線を加えてある。さすがに碁盤の目のようにはいかないが、東西南北を基準としたアメリカのインターステイト・ハイウェイ網が浮かび上がっている。

アメリカ東海岸はアメリカ史の中でも古くから発展し、ボストン、ニューヨーク市、フィラデルフィア、バルチモア、ワシントンDC、リッチモンドという主要都市が南北に並んでいる。とりわけボストン−ニューヨーク市−ワシントンDCを結ぶ地域は都市部が連接するメガロポリスを形成していて、「北東回廊」と呼ばれる。こうした東部諸都市を縦貫するのがI-95で、メーン州からフロリダ州まで続いている。
都市部を通るために道路需要が旺盛で、迅速な道路整備が求められたために、既存の有料道路をインターステイトに組み込んだところが多い。
産業路線であると共に、夏は避暑にニューイングランドへ、冬は避寒に南部やフロリダへ向かう民族大移動が起きるレジャー路線でもある。ニューイングランド地域の有料道路群は、こうした季節的な道路需要に対応するために作られたという経緯を持つ。
ニューヨーク市からハドソン川を遡るルートは古くから内陸部への交通路として発展したが、それをたどるのがI-87である。州都オルバニーを経て、カナダのモントリオールに至る。東部の南北軸には欠かせない道路として模式図に加えておいた。ニューヨーク市からオルバニーまではニューヨーク・ステイト・スルーウェイと呼ばれる有料道路である。

[インターステイト95(I95)とその派生道路群]

[ニューヨーク市−ワシントンDC間の有料道路群]

北部で碁盤の目を乱しているのがシカゴである。これは五大湖があるためで、シカゴには主要路線のうちI-55,I-65,I-80,I-90が集中して北部の交通の要衝となっている。
シカゴは、ミシガン湖の湾奥に位置し水陸の交通の結節点であること、中西部へのゲートウェイとなる位置にあることから、鉄道や道路網のハブとなって発展してきた。「母なる道」と呼ばれるルート66(Old US Highway Route 66)がシカゴを起点としていることも、象徴的である。西部へ向かう開拓者や商人の流れとは逆に、鉄道や道路の開通によって農産物がシカゴに集められ市場が形成され、今でも農産物の先物取引などでシカゴ市場の占める位置は高い。

南部の結節点はアトランタである。I-20とI-75が交差するだけでなく、I-85もアトランタを通っている。
I-85は主要番号でありながら南北を縦貫せずに、ヴァージニア州のリッチモンド付近から南西に向かい、アトランタを通り、ここでI-75よりさらに西側に出て、アラバマ州でI-65と合流して終わる。リッチモンド以北の東部諸州とアトランタとの連絡路であり、同時に、南端はメキシコ湾岸に通じて南部諸州との交通路となっている。このようにアトランタを中心に考えると、I-85の役割はむしろ明確である。国土縦貫路線と言うよりは、むしろアトランタを中心とした南部の地域縦貫路線なのである。
I-85のアトランタ以南はI-75よりも西側を走り、西側が小数であるという路線番号割り振りのルールにも反している。本来ならば、フロリダ半島の東海岸を走るI-95と対になってフロリダ半島の西海岸に降りていくべきはずであるが、そこはI-75がマイアミまで通じてI-85の代役を果たす格好になっている。

ダレス・フォートワースは、航空路線のハブとして知られているが、インターステイト・ハイウェイ網でも主要な結節点となっている。I-20とI-35との交点であるが、これにI-30とI-45が加わっている。I-30はリトルロックとダレス間、I-45はヒューストンとダレス間を結ぶだけの路線で、ともに大陸横断・縦貫路線と言うよりは、完全にダレスを中心とした地域路線になっている。

I-80は東海岸のニューヨークと西海岸のサンフランシスコを結んでいる。この両都市を結ぶことは1913年のリンカーン・ハイウェイ以来大陸横断道路の主目的のひとつになっていて、中西部ではかなりの部分がリンカーン・ハイウェイのルートをなぞっている。今日の経済社会状況を考えても、歴史的に見ても、大陸横断道路の筆頭格である。
サンフランシスコは、全国的なインターステイト・ハイウェイ網を見ると盲腸線の行き止まりのような感がある。USハイウェイ時代のRoute 101が沿海部を走っているのに対して、西海岸の南北路であるI-5は内陸よりのルートを選び、サンフランシスコ湾沿岸(ベイエリア)に立ち寄らずにサクラメントに抜けているためである。そのためベイエリアはI-80の系統に属し、3桁の番号が付いているI-80の派生道路群が高速道路網を形成している。

I-76は、いわゆる0番台の大陸横断路線ではないが、フィラデルフィアからペンシルヴァニア州を横断して西へ向かう路線で東部の基幹道路であることと、コロラド州内でI-80から分かれてデンヴァーに通じる部分にI-76が見られて重複しながらも西部にまで通じていることから、この模式図に加えておいた。またI-76の特徴としてペンシルヴァニア州内はペンシルヴァニア・ターンパイクという有料道路で、この有料道路は路線番号や州毎に管理者を変えながらシカゴまで通じるアメリカでもめずらしい「有料道路回廊」となっている。

I-70は、シカゴに立ち寄らず、ユタ州でI-15と合流して終わり太平洋岸まで通じていないこともあって、大陸横断道路としてI-90やI-80ほどの華やかさはない。だが、メリーランドからオハイオにかけての区間は"The National Road"とも呼ばれるかつての開拓道路・カンバーランド道路にそったフリーウェイで、それにちなんで"The National Freeway"とも呼ばれるなど、東部から内陸への交通路としては由緒正しいルートである。
ペンシルヴァニア州内ではI-76と合流して、シカゴ方面への交通網とも一体化している。だがI-70自体は南寄りのルートを取り、コロンバス(OH)、インディアナポリス、セントルイス、カンザス・シティといった中西部の中核的な都市を結んで、コロラド州のデンバーに至る。デンバーではI-76が再びI-80からの交通を連絡している。

I-40は路線そのものとしてはノースキャロライナ州からカリフォルニア州ロサンゼルスまで、中南部を横断している。
ロサンゼルスに通じている大陸横断ルートなので、大陸横断ドライブを試みる日本からの旅行者の選択肢に挙がるルートだと思うが、I-40を忠実に走っても東海岸の方はこれといった都市を見いだすことが出来ない。むしろテネシー州内で接続しているI-81でアパラチア山脈に沿って北上してワシントンDC以北の都市群にアクセスするのが、大陸横断のドライブとしてふさわしいであろう。
途中の主な経過地にはリトル・ロックや、メンフィスがある。

I-20は準大陸横断ルートとでも言うべき路線で、東海岸は大西洋岸のノースキャロライナから始まっているが、西側はテキサス州でI-10に吸収されてしまう。ジョージア州アトランタと、テキサス州ダラス/フォート・ワースの南部の2大都市を結ぶ路線である。

I-10はメキシコ湾岸に沿った大陸横断道路である。フロリダ州のジャクソンヴィルとカリフォルニア州ロサンゼルスを結んでいる。途中には、ニューオーリンズやヒューストン、フェニックスという都市を通過する。
I-10より更に南に、カリフォルニア州サンディエゴから東に延びるI-8があるが、I-10の支線のような感じでアリゾナ州内でI-10に吸収される。また、フロリダ半島の中央部を横断するI-4がある。


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