捕鯨の町ニュー・ベッドフォード

6月11日(2日目)
その1
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知り合いのTさんのホストマザーのCさんは、実はTさんの通っている英語学校の先生をしている。それで時々学生を招いては、ごちそうをしたりしているそうである。今日11日は州政府から査察があるとかで、そのためであろう、先生と学生皆でホームレスへのスープ配りに動員されているとのこと。ご苦労なことだ。そういうわけでCさんとTさんは連れだって朝早々に出掛ける。なんとか起きてふたりを見送った。

さて遅ればせながらこちらも朝食を取って、出発の支度を始める。これはCさんの配慮で、食べ物とか食器の置いてある位置をあらかじめ教えてもらっている。「朝は忙しくてお構いできないから、自分たちのセルフサービスで勝手にやって。必要なものは揃っていると思うから」ということである。これに甘えて、自分たちのペースで朝食を摂る。私は「何かを食べた」という感触が欲しいのでベーグルを食べるが、同行者CHGはシリアルに牛乳をかけている。それから、昨晩おいしかったCさんの手作りラザニアをマイクロウェーブで温めて食べる。ラザニアはCさんが新婚当時初めて覚えた料理で、料理の本を見ながら一生懸命作った思い出があるそうだ。彼女の思い出もいっしょに味わう。
自分たちの使った食器の片づけをして、ラジオの電源を切り、お礼の言葉を書き置きして、ドアを閉めて出掛ける。鍵はかけなくても良い。Cさんは普段から鍵をかけていないと言う。最初それを聞いたときに聞き返すと、「鍵をかけて警戒するから、人は中に金目のものがあると思って侵入する。はじめから鍵をしないでおけば大切なものがあるとは思わないから、入らない」というのがCさんの考えである。そもそも初対面の人間に、冷蔵庫の中を漁らせ、戸締まりまで任せてしまうところから違う。人間性善説が生きている世界だ。
ニューイングランドという土地柄を感じる。
9:30にCさんの家を出る。


捕鯨の町 ニュー・ベッドフォード

今日は、いったん南東に向かって海沿いのニュー・ベッドフォードNew Bedfordまで行き、北上して、最終的にメーン州のフリーポートFreeportを目指す。マサチューセッツ州内を行ったり来たりするコースで効率が悪いが、ニュー・ベッドフォードには惹かれるものがあった。ここへ行ってみたいと思ったのは、一ヶ月ほど前の"Newsweek"誌にアメリカの国立公園(Histric Siteなどを含む広義の意味での国立公園)を紹介する特集記事(おそらくバケーション用のものだろうが)があって、その中でニュー・ベッドフォードが取り上げられていたのがきっかけだ。かつての捕鯨基地で当時栄えた面影をいまに残しているという。
「環境保護意識」の高まりの中でアメリカは捕鯨を禁止し、日本が続けている「調査捕鯨」に対しても二国間の制裁措置をちらつかせている。そういう国の、捕鯨の町はどうなっているのだろう。かつて鯨を捕っていたといういわば自らの「負の歴史」をアメリカはどう考えているのか、そして、その「負の歴史」をどのようにして「ヘリテッジ」として観光資源に転訛しているのか。ニュー・ベッドフォードという捕鯨の町に対する興味は尽きない。
以前、日本の捕鯨基地のひとつである宮城県の牡鹿町を訪れたことがあり、そことの比較もしてみたいと思う。

今日からひとつの工夫を取り入れた。ダイレクションをあらかじめ紙に書いておいて、助手席の同行者CHGに読み上げてもらおうというのだ。そろそろルートが複雑になってきて、全部覚えきれなくなってきた。事前に書き出すにはあらかじめ目的地とコースを決めなければならないが、今回の旅は時間も限られているし、行きたいところも決まっているので、特に問題はない。むしろ道に迷わず効率的に走りたい。

出発前の計画通り、まずはI-91をExit 18から乗って南へ向かう。スプリング・フィールドでExit 14で下りて、Exit 4からマサチューセッツ・ターンパイク(有料)に乗って東向きにExit 10Aまで行く。ウースターという町になる。そこでMA-146南に入り、一旦州境を越えて、ロードアイランド州の州都プロヴィデンスを通過してI-195東に乗り移り、再びマサチューセッツ州に戻ってくる。


マサチューセッツ・ターンパイクの通行券

ロードアイランド州は全米50州で1番面積の狭い州である。そういう州らしく、マサチューセッツ州内の移動のついでにかするように通過する。ニューイングランド地方の州を全部踏破するには、この通過はなくてはならない。
フォール・リバーFall Riverを経て、ニュー・ベッドフォードには12:00前に着いた。
途中給油のために小休止しているが、2時間半のドライブだ。同乗者CHGは途中から寝ていたが、昨日と違って体調は良さそうである。朝食をしっかり摂ったので、まだそんなに空腹ではない。さっそく捕鯨博物館Whaling Museumに向かうことにする。


まだ書き書き中です。

捕鯨博物館に展示されている全体骨格標本。
鯨の骨は油脂分を多く含み(鯨からは多量の油脂が取れ、欧米での捕鯨の目的がその採取だったことが納得がいく)、この骨格からも油が滲み出ている。色の濃くなっている部分。以前、東京品川の和刈神社を訪れた際に聞いた話だと、鯨の骨を飾り物として仕上げるには、1年間土の中に埋めて油ぬきをしないといけないそうである。



メルヴィルのモビー・ディック(白鯨)


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By CHG & TTS