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アメリカの吊り橋

1883年にニューヨーク市のマンハッタンとブルックリンを結ぶ中央支間長486mのブルックリン橋が完成して以来、吊り橋架橋技術はアメリカで急速に発展し、その建設史はそのまま近代的な長大吊り橋の建設史と言ってもよいくらいである。新しい力学理論や土木技術が即座に応用され、中央支間長の世界記録を伸ばしていった。初代タコマ橋の崩落事故のような惨事を招くこともあったが、それを教訓として、風が引き起こす発散振動についても研究が進められた。まさに土木の実験場であり、経験を通じて技術が進歩した。
政治経済的にも、第二次世界大戦を間に挟んで、ニューディール政策によって大規模公共事業が押し進められた1930年代から、戦後の経済繁栄を謳歌していた1960年代にかけて、全米各地に長大な吊り橋が架橋されていった。
こうしたアメリカの吊り橋建設は、1964年のヴェラザノ・ナロウズ橋(中央支間長1298m)の完成によって頂点を迎えた。当時ヴェラザノ・ナロウズ橋は世界最長を誇り、ゴールデンゲートブリッジ(金門橋=同1280mm)、マキノ橋(同1158m)、ジョージワシントン橋(同1067m)を従えて、世界四大吊り橋をアメリカが独占した。
ヴェラザノ・ナロウズ橋以後アメリカでは長大な吊り橋の建設は行なわれていない。吊り橋架橋ブームはヨーロッパへと移り、さらに本四連絡橋プロジェクトが進められた日本でも一段落し、今は経済発展を続ける中国やアジア諸国で長大な吊り橋が盛んに建設されている。現在の世界最長の吊り橋は日本の明石海峡大橋である。

世界の長大吊り橋一覧(トップ15)

赤色は世界最長だった期間
順位 吊り橋名 中央支間長 国名 竣工年 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000
1 明石海峡大橋 1991m 日本 1998年

2 グレートベルト・東橋 1624m デンマーク 1998年

3 ハンバー橋 1410m イギリス 1981年


4 江陰長江大橋 1385m 中国 1999年

5 青馬大橋 1377m 中国(香港) 1997年

6 ヴェラザノ・ナロウズ橋 1298m アメリカ 1964年


7 ゴールデンゲートブリッジ 1280m アメリカ 1937年


8 ヘガグステン橋 1210m スウェーデン 1997年

9 マキノ橋 1158m アメリカ 1957年

10 南備讃瀬戸大橋 1100m 日本 1988年

11 ファティスルタンメハメット
(第2ボスボラス)橋
1090m トルコ 1988年

12 ボスボラス橋(第1) 1074m トルコ 1973年

13 ジョージワシントン橋 1067m アメリカ 1931年


14 来島第3大橋 1030m 日本 1999年

15 来島第2大橋 1020m 日本 1999年



以下、私が訪れた全米各地の吊り橋を東部から西部の順に紹介する。

ブルックリン橋

歩道が併設されていて、マンハッタンとブルックリンの間を歩いて渡ることが出来る。

Brooklyn Bridge, NYC, NY
イースト・リバーを越えて、ニューヨーク市のマンハッタンとブルックリン(完成当時は独立したブルックリン市だった)とを結ぶ中央支間長486mの吊り橋で、1883年に完成した。平行線ケーブルや潜函工法(ニューマチック・ケーソン)という今日の吊り橋で使われている基本的な技術を確立させ、近代的な吊り橋に先鞭を付けた土木史上記念的な橋である。技術革新によって錬鉄(iron)に替わって粘性の高い鋼鉄(steel)が使われたのも、500m級の吊り橋の建設に道を拓いた。
建設には、近代的吊り橋の黎明期にあって多大な苦難が伴った。平行線ケーブルを発明しジョン・ローブリングが当初建設を進めたが、途中事故で死亡した。息子のワシントンが後を引き継いで工事を続けたが、今度は彼が工事中にケーソン病(加圧してあるケーソン内から急に普通の大気圧の元に戻ると、血液中に溶けていた空気が気泡になってあらわれる)にかかってしまい半身不随になってしまった。結局建設から完成まで13年を要した。
ブルックリン橋が当時の人々にとっていかに驚異の新技術だったかは、その当時の人気サーカスの象が渡って強度を実証して見せたというエピソードによく表われている。
19世紀末に都市に建設された近代的な吊り橋は、石造りの主塔のゴシック調の荘厳なデザインと、ケーブルが描く幾何学模様が、産業と化学の発展を謳歌する時代の雰囲気とマッチして、しばしば絵画の題材にも取り上げられた。喧噪のニューヨーク市にあって今なお存在感を示している。

1875年というのは、この主塔が建てられた年であろうか?

取材当時、まだワールド・トレード・センターがきれいな夜景を見せていた。
普段は南側が歩道、北側が自転車道となっているが、2001年9月11日は、マンハッタンを歩いて脱出する人で埋まった。



マンハッタン橋

Manhattan Bridge, NYC, NY


ヴェラザノ・ナロウズ橋

Verazano Narrows Bridge, NYC, NY
ニューヨーク湾の入り口、ブルックリンとスタテン島にはさまれて狭くなったヴェラザノ・ナロウズ(水道)にかかる吊り橋で、中央支間長が世界第6位、アメリカ国内第1位を誇る。

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ジョージ・ワシントン橋

George Washington Bridge, Fort Lee, NJ--NYC, NY
ハドソン川に架かりマンハッタンとNJ側のフォート・リーとを結んでいる。上部デッキだけで片側4車線計8車線、下部は片側3車線計6車線の、総計14車線を数える。世界で一番車線数の多い橋である。橋の幅員も63.3mと、明石海峡大橋の30mの2倍以上の広さである。中央支間長1067mは、1931年の完成当時の吊り橋が500m前後で留まっていたのを大きく引き延ばした。
1931年に完成した際には1層だけの橋だった。その後交通量が急速に増加し1954年の時点では年間交通量が3300万台にも達して、近い将来さらなる増加が予測された。そこで1955年のニューヨーク大都市圏動脈交通施設合同調査(Joint Study of Arterial Facilities of 1955)においてジョージ・ワシントン橋の2層化が提言され、1965年に下層を追加している。
現在では1日に35万台の車が通過する。渋滞の名所として知られ、マンハッタンへ通じる枢要な交通路でラジオの交通情報には必ず出てくる。交通情報ではよく"GWB"と略される。
アメリカの東海岸を貫く主要幹線道路I-95の一部にもなっている。

トラスが組み上げられた橋塔は今となってはジョージ・ワシントン橋の特徴のようにもなっているが、建設当時はこれはあくまでも骨組みであってこの表面に大理石の板を張り付ける計画であった。ところが予算不足となり骨組みだけで放っておかれたまま、今日まできているのである。



デラウェア・メモリアル橋

Delaware Memorial Bridge
ニュージャージー州とデラウェア州の境を流れるデラウェア川に架かる。I-95の一部として、ニューヨーク・ワシントンDC間の大動脈の一部をになっている。方向別に別れていて、3車線の橋が二つ並んでいる双子橋。



チェサピークベイブリッジ



【写真=切手で代替】

未訪
海軍士官学校で有名なメリーランド州の州都アナポリスとチェサピーク湾の対岸とを結ぶ吊り橋で、二つの橋が並行して架かっている双子橋。メリーランド州の切手の図柄にも採用されている。
切手に左上にあるのはチェサピーク湾名物の蟹で、ヨットとあわせて、海洋州であることをアピールする図柄になっている。



マキノ橋

写真未訪


タコマ橋

写真

Tacoma Narrows Bridge, WA
未訪

現在の吊り橋は1950年に完成した2代目にあたる。先代の吊り橋は1940年に完成したが、完成後4か月後に、設計上の最高風速よりはるかに弱い風速にもかかわらず風に煽られてフラッター(共振)現象を起こして崩壊してしまったことで土木史に名前が刻まれている。この橋の崩壊を教訓にして、以後橋の振動についての研究が進められた。



ゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)

Golden Gate Bridge
サンフランシスコ湾岸の橋のなかで最も有名で、サンフランシスコ観光の目玉のひとつにもなっている。中央支間長1280mを誇り、1937年に竣工した当時は世界最長の吊り橋だった。戦後1964年にニューヨーク市にヴェラザノ・ナロウズ橋ができるまで世界最長の座を維持し、現在も世界で7番目(アメリカ国内で2番目)に長い吊り橋である。
1層で片側3車線/往復6車線と車線数は少なく、中央分離帯もない。北岸からサンフランシスコに直接乗り入れるルートだけに、時間帯によっては非常に混雑する。
ゴールデンゲートブリッジには歩道が併設されていて歩いて渡ることが出来る。常時歩いて渡ることの出来る吊り橋としては世界最長ではないだろうか。



ベイ・ブリッジ

San Francisco Oakland Bay Bridge
サンフランシスコ湾にかかる橋は、ゴールデン・ゲート・ブリッジを除いて、結んでいる両岸の地名を重ねるので、ベイブリッジも正式名称は"San Francisco Oakland Bay Bridge"と長くなる。サンフランシスコ湾の中心部を横切り東岸のオークランドとサンフランシスコを直結していて、もっとも混雑する橋である。
途中にトリージャー島(宝島)を挟んでいて、東側と西側では橋の土木構造が違っている。東側はトラス橋、西側は吊り橋を2つ連ねた構造(1つのアンカレッジを2つの吊り橋が共有している。日本では瀬戸大橋の南北備讃瀬戸大橋が同じ構造)になっている。

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最終更新2002年12月31日
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