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ヴェラザノ・ナロウズ橋

ヴェラザノ・ナロウズ橋はニューヨーク市のスタテン島とブルックリン(ロングアイランド)との間に架かる世界で6番目、アメリカ国内で1番目に長い吊り橋で、その中央支間長1298mを誇る。1964年に竣工してから1981年にイギリスのハンバー橋が開通するまでの15年間、世界で一番長い吊り橋だった。
このヴェラザノ・ナロウズ橋ができるまでは、同じアメリカはサンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジ(1280m)が1937年の竣工以来世界最長の座を守っていた。1957年に竣工した中央支間長1158mのマキノ橋と、1931年に竣工したジョージワシントン橋(1067m)を合わせて、当時のアメリカは世界の長大橋トップ4を独占していた。1960年から70年代にかけてが、アメリカ長大吊り橋の黄金期だったと言える。
ヴェラザノ・ナロウズ橋以降、アメリカでは世界記録を争うような長大な吊り橋は建設されていない。

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ナロウズ The Narrows というのは、「狭くなっている場所=瀬戸、海峡」という意味で、ヴェラザノというイタリア人の探検家にちなんでヴェラザノ・ナロウズと名付けられている。大西洋からニューヨーク・マンハッタン島へ海路向かうと、スタテン島とロングアイランドが互いに迫り合って、水路が狭くなっている。この狭隘部をはさんで、大西洋側がロウアー・ベイ、内陸側がアッパー・ベイと呼ばれている。
海上交通にとっては混み合う狭隘部であっても、陸上交通にとっては橋を架ける最適地である。

このページに載せている空撮の写真はすべて、ニューヨークJFK空港に着陸する旅客機の窓から作者が撮影したものである。撮影時にはまだ着陸態勢には入っておらず、デジタルカメラで撮影できた。この後ロウワー・ベイを越えて、大西洋沖まで出て海側から空港へアプローチする。白く写っているのはちょうど前日に降った雪が残っているためである。

ヴェラザノ・ナロウズに橋を架ける計画は、1955年にニューヨーク大都市圏動脈交通施設合同調査 Joint Study of Arterial Facilities of 1955によって提言された。この調査報告は、ニューヨーク大都市圏の増加する自動車交通に対して、ニューヨーク市の外周部の道路網整備を求めるもので、ヴェラザノ・ナロウズ橋、スタテン島ハイウェイとスロッグズ・ネック橋の建設、ジョージ・ワシントン橋の下層デッキの追加がその目玉となっていた[要旨]。
ヴェラザノ・ナロウズ橋が開通したことにより、スタテン島を経由して、ニュージャージー州側とブルックリン、ロングアイランド側が直接結ばれた。橋は、スタテン島側ではスタテン島ハイウェイ Staten Island Hwy (I-278) に、ブルックリン側ではブルックリン・クイーンズ・エクスプレスウェイBrooklyn-Wueens Expwy(I-278)とベルト・パークウェイ Belt Parkway にそれぞれ接続している。通過交通にとっては混雑するマンハッタン島を避けることができ、その分、都心部の交通量を減らす役割を果たしている。
実際、ニュージャージーからJ.F.ケネディ国際空港へ向かう際や、ブルックリンの知り合い宅を訪れる際には、重宝するルートである(2001年9月11日のワールドトレードセンターのテロの影響で、そのすぐ近くにつながっているホーランド・トンネルが通行規制されることが多く、スタテン島・ヴェラザノ・ナロウズ橋経由のこのルートはほぼ唯一の選択肢と言ってもよいくらいである)。

橋は、上下2層、それぞれ往復6車線、計12車線の規模を誇っている。建設後に交通量が増加して下層が追加されたジョージ・ワシントン橋と違い、ヴェラザノ・ナロウズ橋は当初から2層12車線の橋として建設された。1964年の開通当初は6車線しかなかったというのは、上層の6車線しか一般供用されず、下層6車線は将来の交通量増加に備えた「予備」(reserved)として扱われたためである。予測では下層も一般供用しなければならないほど交通量が増加するのは1975年とみられていたと言う。だが、実際にはその予測を上回って交通量が増え、1969年に下層も一般供用されて、現在に至っている。
スタテン島側、ブルックリン側ともにハイウェイからアプローチすると上下を自由に選べるが、スタテン島のローカル・ロードから入ると、下層に誘導されるようになっている(写真は下層・東向き)。
お勧めは上層・西向きで、アメリカは右側通行のため、ブルックリンの町並みや、遠くマンハッタンの摩天楼を眺望することができる。水道には多くの船が忙しく行き交っている。助手席からの眺めは最高とのこと。夜、夜景を眺めるのもいい。
なお、西向き(ブルックリン→スタテン島・NJ)のみ通行料$7を徴収される。料金所はスタテン島側にある。東向きは無料で通過できる。

スタテン島側のローカル・ロードからの入り口に、顕彰碑が建てられている。

毎年秋に行なわれるニューヨーク・シティ・マラソンでは、ニューヨーク市の全てのボロウ(区)を経由するために、ヴェラザノ・ナロウズ橋のリッチモンド(スタテン島)側が出発地点になっている。この時ばかりは前日の夜からマラソンがスタートする正午過ぎまで自動車は通行止めとなる。歩行者(?)が橋を渡れる貴重な機会であるが、リンカーン・トンネルの往復4キロメートルならともかく、フル・マラソンに参加する体力もなく、結局の所歩いて渡ることもないだろう。
あまりにも参加者が多いため、色分けされ、その色によって上層か下層かが決まっているという。
ニューヨーク・シティ・マラソンの名物(?)として橋の上から立ち小便をする男性参加者がいるが、快感と言うよりは、高所恐怖症で尿意どころではないような気がするが。


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